5・3 港湾労働関係

 

5・3・1  2005年港湾春闘

 

1.      春闘の争点

組合側より雇用と就労の安定化、各種基金制度の拡充、事前協議制度の改定、産別賃金改定等を盛り込んだ要求書が出されたが、今春闘の課題はこれらの要求を実現するための原資の確保とされ、昨年に引続き使用者側の日本港運協会より利用者側の邦船社及び外船社に対して港湾荷役にかかる届出料金及び認可料金の完全収受が強く要求された。船社が史上空前の利益を上げる中、料金の完全収受に向けての理解と協力が要請された。

 

2.      労使交渉経緯

(制度関係)

29日に開催された第1回中央団交では、組合側(全国港湾労働組合協議会:全国港湾、全日本港湾運輸労働組合同盟:港運同盟)より使用者側(日本港運協会:日港協)に対し、「05年度港湾産別協定の改定に関する要求書」並びに「港湾労働の安定化に関する申入れ書」が提出され、産別協定の改定を目指して以下の要求項目について趣旨説明がおこなわれた。

 

(1)雇用と就労の安定化

(2)各種基金制度の拡充

(3)事前協議制度の改訂

(4)作業基準の順守、

(5)年末年始特別休暇の例外荷役作業における賃金・労働条件の改善

(6)産別賃金の改定

(7)料金完全収受の履行

 

今年は規制緩和、スーパー中枢港湾構想、ターミナル自動化など港湾の情勢が激変する中で、港湾労働秩序の安定を図るための基金の確保や事前協議制度の改定が要求された。

 

32日の第2回中央団交では、使用者側より組合側の要求項目に対して、逐条的に考え

方が示されたが、組合側はその内容全般に対して不満を表明し進展がなかった。組合側よ

り次回交渉でも進展がなければ、実力行使の検討に入らざるを得ないとの姿勢が示された。

 

315日に開催された第3回中央団交で使用者側より、@料金問題では船社側の了解を取付けつつあり、成果を上げている、A港湾労働運営基金(コンテナ:1円/トン)は日港協の責任で船社に継続の約束を取付ける等、一歩前進した回答が提示されたため、組合側は320日に予定していた日曜荷役拒否のストライキを取下げた。

 

331日開催された第4回中央団交においては、制度問題について双方が歩み寄りをみせ妥結に達し、仮協定書及び仮覚書が締結された。主な合意事項は以下のとおり。

 

(1)港湾労働運営基金については、港湾労働対策の協力金として2005年度より3年間コンテナトン当たり1円を維持・継続する。

(2) 199159日付協定覚書「労働時間の短縮について」は、労働基準法に基づく算定

基礎を目標として出来る限り早急に実現に向けて努力する。但し、本年度は現行155時間

154時間とする。

(3)港湾労働者の雇用と就労に影響する問題については、現行事前協議制度に基づき、当事者・関係者はもとより、中央・地区の連携を密にして適切な運用により問題の解決を図る。

(4)スーパー中枢港湾構想におけるコンテナターミナルの再編においては、雇用と就労問題

が生じないよう引続き協議する。

(5)ターミナル自動化問題については原則として事前協議で対応する。

(6)年末年始特別有給休暇等例外荷役の取扱いについては2005年度労使政策委員会協議事項とする。 

 

(賃金関係)

船内賃金関係の交渉は組合側(港湾荷役事業関係労働組合協議会:港荷労協)と使用者側

(日港協船内経営者協議会:船経協)との間でおこなわれた。32日に開催された第一回船内賃金交渉(船内労使協議会)では組合側よりの要求書内容(基準内月額一律10,000円と基準内月額平均6000円、合計16000円の賃上げ)の趣旨説明が行われた

 

315日に開催された第2回船内賃金交渉では、船経協より月額1,500円(基準内賃金)の有額回答が示されたが、組合側は不満を表明し、態度を保留した。

 

323日に開催された第3回船内賃金交渉では、業側より前回の回答額月額1、500円(基準内賃金)に500円上積みし2,000円にするとの回答があったものの、組合側は納得できる金額ではないとして拒否した。組合側は行動の自由を留保するとしたが、口頭での就労拒否等の通知はなかった。その後330日に港荷労協より船経協へ争議予告通知が出された。31日午後開催予定の船内賃金交渉において議が整わない場合は43()以降、本問題が解決されるまで日曜出勤就労を拒否するというもの。

 

331日に開催された第4回船内賃金交渉では上積み回答は提示されず、午後10時頃に交渉中断、翌41日に仕切り直しとなった。1日に再開された交渉では使用者側が500円上積した2500円の回答を提示するも、組合側は拒否。更に休憩を挟みトップ交渉に入るなど断続的に交渉が進められた結果、正午過ぎに基準内賃金月額3,000円の値上げ、一時金月額一律2,000円が提示され、漸く妥結した。因みに昨年の妥結額は基準内月額1500円、一時金月額2000円であった。

 

3.      総括

船社の協力体制については、日港協より「邦船関係は協力体制を確認できたが、外船関係は一部調整が難航しているところもある」とし、「協力できない船社には港湾労組も黙っていないだろう。そうした船社は限定してストライキの対象になりうる」との見解が示さていた。船社側の高業績を背景に組合側がストライキ実施を示唆するなど波乱が予想された今春闘は賃金面では昨年妥結額を1、500円上回ることになったが、昨年に続いて一度のストライキも実施されることなく妥結に到った。

 

 

<参考資料> 2005年港湾春闘の労使交渉経緯

2月2日                              全国港湾は全国統一行動(中央行動)として船社、荷主などのユーザーに料金申し入れ行動をおこなった。

2月9日                第1回中央団交

組合側より「05年度港湾産別協定の改定に関する要求書」並びに「港湾労働の安定化に関する申し入れ書」が提出され、要求・申入れ内         容について趣旨説明がなされた。

221日                         港荷労協より船経協に基準内月額16,000円の値上げを内容とする        要求書が提出された。

32              2回中央団交

業側より回答あるも、組合側は「回答されたことは評価するが回答内容は不満」と返答。

32               第1回船内賃金交渉

組合側より要求内容の趣旨説明がなされた。

33               全国港湾より「05春闘の闘争体制強化と当面の行動に関する準備指示」

320日(日)に休日出勤拒否並びに荷役阻止の実力行動を準備)が各単組委員長等に出された。

3月15日              第3回中央団交

使用者側は再検討の上回答。組合側は「前回よりも一定の前進はあったものの、中間回答として受け止めるとして、次回は回答を前進させることを願う」と返答。320日の日曜作業拒否の準備指令は解除された。

315日           第2回船内賃金交渉

船内賃金交渉で業側より月額1、500円の有額回答があったが、組合側は不満を表明。争議3権の移譲を通知。

323日          第3回船内賃金交渉

使用者側より前回の回答額月額1,500円に500円の上積し、合計2000円とする回答あった。組合側は「回答は全く不満である。更に大幅の上積を要求する」と返答。

330日          港荷労協より船経協へ31日に開催予定の次回船内賃金交渉において議が整わない場合は「43日(日)以降本問題解決まで日曜出勤就労拒否」の争議予告通知が出された。

331日          4回中央団交及び第4回船内賃金交渉

中央団交で制度問題について合意に達したが、船内賃金交渉は妥結に到らず。

4月1日             第5回船内賃金交渉

業側より基準内賃金月額3,000円の値上げ、一時金月額一律2,000円の支給が示され妥結した。330日の争議予告通知は解除された。