8・4 2004年度の内航海運対策

 

企業の国際競争力の激化等を受けた物流効率化・高度化の要請の高まりから、事業者の創意工夫により、質の高い海上輸送サービスをできる環境を整備すると共に航行の安全確保及び船員の労働保護を図るため、内航海運業法、船員職業安定法および船員法の改正を一括して行う「海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律」が200541日に施行された。

法改正については、次世代内航海運ビジョンの提言を受け、20024月に官公労使からなる「内航船乗組み制度検討会」を設置し、内航船員の乗組み体制等に関する規制の見直しについて検討してきたところ200312月に労働時間規制及び定員規制の見直し、雇入契約の公認制から届出制への移行等を内容とする最終報告をベースとしている。(船協海運年報2004 参照)

改正内容の主な柱は以下のとおり。【資料8-108-11参照】

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(1)内航海運業法の一部改正

@    参入規制の許可制から登録制への緩和

これまでの行政庁による審査上、裁量的な基準を設けることができた許可制から裁量の余地のない定められた基準に従い定型的な審査を行い判断する登録制に緩和された。また、登録基準について、これまでの一定規模から総トン数100トン以上又は長さ30m以上の船舶を1隻以上所有すること等が変更になった。

A    事業区分の廃止

内航運送業と内航船舶貸渡業の事業区分を廃止し、全ての内航海運業者は、オペレーターを介さずに直接荷主との運送契約の締結ができる。

B    運航の安全確保のための運航管理制度の導入

運送を行う内航海運業者は、運航管理規程の作成及び運航管理者の選任を行い、国土交通大臣に届出の義務付け

C    運航約款制度の導入

荷主が不特定多数になる可能性のあるRO-RO船・コンテナ船の船種に約款規制の対象とし、契約関係の透明性、あるいは荷主保護を図る。

D    定期的な営業報告制度

全ての登録事業者が対象となり、年に1回、営業概況報告書、財務諸表、内航海運損益明細書、固定資産明細書を提出する。

E    適正船腹量・最高限度量制度及び標準運賃・貸渡料制度の廃止

 

(2)船員職業安定法の一部改正

@    常用雇用型船員派遣事業の制度化

自己の常時雇用(雇用期間の定めのない雇用)する船員について船員派遣事業を行おうとする者は、国土交通大臣の許可を受けることにより、これを行うことができる。

許可基準は、@適正な雇用管理、A個人情報(派遣船員)の適正な管理、B派遣事業を的確に遂行できる能力(財産的基礎、組織的基礎、事業所に関する判断)を有しているか、の要件としている。

A    無料船員職業紹介事業の拡大

学校等は、国土交通大臣に届け出ることにより、当該学校等の学生生徒等について、無料の船員職業紹介事業を行うことができる。

 

(3)船員法の一部改正

@    労働時間規制の見直し

労働組合等との協定により、海員に時間外労働(1日当り8時間を超える労働)をさせることができる。ただし、1日当りの労働時間は14時間、1週間当りの労働時間は72時間を限度とする。

A    雇用契約の公認制から届出制への緩和

B    監督権限の強化

船舶の航海の安全を確保するため緊急の必要があると認められるときは、船員労務官が即時に航行停止命令等を行うことができる。

 

◎ 船員法改正にともなう6級海技士以上の航海当直の義務付けと内航船の定員規制

イ.航海当直における6級海技士(航海)以上の海技資格の義務付

@ 同義務付は船舶職員及び小型船舶操縦者法施行令の配乗表等船舶職員及び小型船舶操縦者法体系で位置付けるのではなく船員法体系で位置付ける。

A 内航船だけでなく外航船も適用する。

B 当該海技資格を義務付けられた船橋航海当直者は、船舶職員であるか否かを問わないこととする。

C 航海当直部員にあっては海技免状受有者であっても航海当直部員の認証(船員法117条の2)は従来通り必要である。

D 実施時期は6級海技士の海技免状受有者の養成状況を勘案し、改正船員法施行日(1741日)から1年の猶予期間を設ける(実施は1841日)

E 漁船については、引き続き協議する。

ロ.内航船の安全最少定員規制

@ 安全最少定員とは航海当直作業や入出港作業等を行う上で最低限船舶の安全運航の確保に必要な員数である。

A 安全最少定員の算出は、平成1741日の改正船員法施行に合わせ、雇入契約成立・届出の際に当該船舶の最長航行時間に基づいて計算し、記載を義務付ける。

B 総トン数200トン未満の船舶の甲板部の乗組み定員規制(平成8228日付、第56号、第57号)は廃止し、総トン数200トン未満であっても200トン以上の船舶と同様の扱いとする。

ハ.内航船の標準定員規制

@ 標準船員とは安全最少定員に荷役作業、保守整備作業を行う上で必要な定員を加えたものである。雇用契約の公認時のデータをもとに総トン数、船種、航海時間等別に標準定員を定める。

A この定員を下回る場合には、必要に応じて船舶所有者に通告した上で、ブラックリストまたはグレーリスト扱いとし船員労務官による頻繁な監査を行うこととする。ただし、標準定員を下回るからといって直ちに船員法に違反するものではない。

B 標準定員に関する具体的な運用は改めて通知する。

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