2・5 海洋汚染防止に関する問題
2-5-1 統合ビルジシステム(IBTS)に関するガイドライン
機関室から発生する油分を含んだ汚水(ビルジ)の量そのものを削減することができれば、海洋への油排出を防ぎ、より一層の海洋汚染防止を図れるとの観点から、わが国は2004年3月のIMO第51回海洋環境保護委員会(MEPC51)にIBTSに関する提案を行った。同システムは、漏洩した海水あるいは清水などの油分を含まないビルジ(Clean Drain)と主機などの機器から漏洩した油を含んだ油水混合ビルジ(Oily Bilge)が混ざり合わないようなシステムとなっている。
IBTSについては、2005年2月の第48回設計設備小委員会より検討が行われ、2006年2月のDE49で最終化され、2006年3月に開催されたMEPC54において、採択された。
これにより、わが国が提案したIBTSの概念が国際規格となった。
2-5-2 洋上における船舶間貨物油移送による海洋汚染の防止について
国家の管轄権の及ばない外洋において、船舶間の貨物油、燃料油など油の移送作業が定常的に行われており、これに付随して油流出事故が頻繁に発生しているとして、船舶間の油移送に関する規定をMARPOL条約附属書Tに新たに設けることが2005年7月のMEPC53に提案された。同提案については、多数の国より支持があり、2006年4月の第10回ばら積液体・ガス小委員会(BLG10)より検討が開始されることとなった。
BLG10においては、各国からの提案に基づき、主に以下のとおり審議が行われた。
(1)バンカー作業への適用について
規制対象にバンカー作業を含めることに反対する国はあったが、バンカー作業中の油流出によっても海洋は貨物油と同様に汚染されることから、原則として同作業を規制対象とすることが合意された。
(2)FPSO/FSU(※)への適用について
FPSO/FSUへの適用に反対する意見が多数を占めた。反対する意見は、FPSO/FSUに対しては、既に国内法により十分な安全対策が図られており、新たな規則の適用は必要ないとするものであった。
しかしながら、適用を支持する意見もあり、適用の可否については、継続して検討が行われることとなった。
※FPSO/FSU:洋上で石油・ガスを生産し、生産した石油・ガスを設備内のタンクに貯蔵して直接輸送タンカーへの積出を行う設備
(3)規制適用海域について
規制適用海域については、領海の他、原則として、排他的経済水域(EEZ)およびその他の海域(high sea)も対象とすることが合意された。
なお、同附属書Iの改正案については、書面審議グループを設置し、詳細な検討を行い、検討結果が2007年4月のBLG11に報告されることとなった。