5・5 輸出入・港湾諸手続の簡素化について
5・5・1 FAL条約の締結と諸手続の簡素化
FAL条約は、国際海上交通の円滑化のため国際航海に従事する船舶の入出港時における手続や書類の簡素化等を図ることを目的としたIMOの条約であり、1965年に採択され1967年に発効しているが、関係省庁が多岐にわたっており調整が困難であったこともあり日本は締結には至っていなかった。
こうしたなか、2004年3月に策定した「規制改革・民間開放3カ年計画」や関係業界からの働きかけにより、関係省庁は輸出入・港湾手続関連府省連絡会議において、FAL条約の対象である入港時の各種諸手続の見直し、更に同条約の対象外ではあるが入港前諸手続の見直しも併せて検討を行い、関税法、港湾法等の関係法令改正法案およびFAL条約批准法案を2005年の第162回通常国会に提出、これら法案がそれぞれ承認された結果、日本は同年9月2日にFAL条約を締結し、11月1日より国内で効力が発生することとなった。
関係者にとって長年の念願であったFAL条約の締結がようやく実現し、従来関係省庁により異なっていた諸手続が画一・簡素化され、FAL様式に該当する申請書類は16種類が8種類に統合されるとともに申請項目の約6割が削減された。さらにFAL様式に該当しない申請書類についても、夜間入港許可申請や入港通報等3種類が廃止され、その他5種類が入港前手続様式として一本化された(資料5-5-1参照)。また、これら書類ベースでの改正に伴うSea-NACCS、港湾EDIシステムおよびシングルウィンドウシステムのプログラム改正も行われることとなった。
このように、関係省庁の本格的な取組みにより、港湾諸手続の申請書類・項目数の削減・廃止が実現されるとともに、申請書類の画一化が図られるなど簡素化に向けた動きが一歩前進したが、これで諸外国に比して大幅に遅れていた諸手続業務の非効率性が全て解決されたわけではなく、今回の見直しはあくまでFAL条約の締結に伴う、いわば書類ベースの簡素・画一化とそれにともなう各種電子申請システムの改善を行ったことが主な対応である。
5・5・2 輸出入及び港湾手続きの最適化計画
財務省をはじめとする関係6省庁は、2005年12月に輸出入及び港湾手続関係業務の業務・システム最適化計画を策定した。これは輸出入及び港湾手続について、既存システムの相互接続にとどまらず、手続の簡素化、画一化を行い、FAL条約にも対応した新しいシステムの構築を目指すもので、5つのコンセプト(@国際標準への準拠、A申請者の視点での検討、B業務・システム双方の見直し、C主な行政手続の原則電子化、Dセキュリティ、セーフティとの両立)を基本理念として掲げている。
特に各府省の申請手続きの電子化を推進し、府省横断的なワンストップサービス・シングルウィンドウ化の考え方から業務・システムを最適化するものとし、財務省の海上貨物通関情報処理システム(Sea-NACCS)、国交省の港湾EDI、法務省の乗員上陸許可支援システムなど各府省の個別システムを束ねる府省共通ポータルを2008年10月以降に稼動させるとしている(資料5-5-2参照)。これによりポータルへの1回の申請手続により関係個別システムへ自動的に振り分けられるなど、現行シングルウィンドウの使い勝手の悪さが解消されることが望まれる。
当協会では最適化計画にあたり、府省共通ポータルは経費や既存システムとの整合性から新たにシステム開発することなく、既存システムを利用することを求めるとともに、システム運用安定化、データベースの共有化など利便性への配慮などを要請した。
また、上記の府省共通の最適計画に続き、2007年3月には税関業務(財務省)や港湾手続き関係業務(国交省)など個別省庁による業務・システムの最適化計画が策定された。
5・5・3 ACL業務(船積確認事項登録業務)利用率の促進
近年、港湾における一層の物流効率化の必要性が叫ばれるなか、わが国外航コンテナ船社は国際海上輸送の担い手として、早くからシステム化・EDI化に取り組んでおり、その一環として、Sea-NACCS参加船社は1999年10月の更改NACCSの稼働に際して自社システムを大幅に改編して対応し、これに要する多大な投資を行った上で、輸入の上流業務である積荷目録登録をほぼ完全に実施しているが、輸出の上流業務であるEDI化が著しく低いため、下流業務を行うこととなる船社はB/L作成のために必要な情報をほとんど電子情報で入手出来ず、未だに紙のドックレシートから入手せざるを得ない状況にある。
そのため、当協会は、2003年3月財務省関税局および通関情報処理センターに対して、積荷目録情報のベースとなるSea-NACCSが提供している船積確認事項登録業務(ACL業務)の利用促進を図るための協力を要請し、当協会と通関情報処理センターは共同で、貨物情報のスタートの立場にある海運貨物取扱業者との意見交換会を実施した。その後、更に効果的活動を行うために外国船舶協会をはじめとした関係団体に働きかけ、当協会、外国船舶協会、(社)日本通関業連合会および日本海運貨物取扱業会の関係4団体で本活動を推進し、財務省関税局および通関情報処理センターがこれに協力することとなった。
当協会をはじめとする4団体はこれまで財務省関税局および通関情報処理センターと協力してターミナル関係者、海運貨物取扱事業者への説明会、関係業界団体との意見交換会を実施するなどACL業務利用率向上のための活動を行った。
こうした活動を行った結果、ACL利用率は以下の通りとなった。(昨年同月に比べ、邦船全体で6.6%、外船全体で42.7%、邦外船全体で31.1%、それぞれ利用率が上がった)
2006年4月港別EDI化率
|
仙台 |
東京 |
横浜 |
清水 |
御前崎 |
名古屋 |
四日市 |
大阪 |
神戸 |
門司 |
博多 |
その他 |
全国 |
邦船 全体 |
60.3% |
49.3% |
28.5% |
50.3% |
100% |
76.4% |
77.5% |
30.7% |
45.7% |
26.2% |
20.8% |
0.0% |
50.1% |
外船 全体 |
10.7% |
42.0% |
25.8% |
44.3% |
|
66.0% |
38.7% |
31.9% |
46.1% |
16.6% |
35.9% |
12.0% |
42.1% |
邦外船全体 |
35.7% |
44.2% |
26.5% |
45.8% |
100% |
68.9% |
64.5% |
31.5% |
46.0% |
23.8% |
30.9% |
7.2% |
44.3% |
注) 邦船全体とは、日本郵船、商船三井および川崎汽船の3社、外船全体とは、エバーグリーン、OOCL、韓進海運、マースク、APL、ハパグロイド、現代、MISCの8社で集計平均化した数値。
5・5・4 ドックレシート(D/R)フォームの変更
国際コンテナ貨物運送における船積関係書類であるD/R(Dock Receipt)、CLP(Container Load Plan)については、関係船社が同一のフォームを使用することによって書類作成業務・関係手続きを合理化・簡易化する目的で、当協会(JSA)と日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)が協力して、JSA−JASTPRO統一フォームを制定しており、広く関連業界に行き渡っていた。
しかしながら、現行フォームが制定された1982年以降、海上貨物通関情報処理システム(Sea-NACCS)の普及によって、貨物情報・コンテナ情報の電子化が進み、船社は電子情報に基づいて自社システムにB/L情報を入力するケースが主流となっている一方、D/Rをコンテナ搬入の受取証として発行するケースは少なくなっており、D/Rの機能は失われつつあるのが実情である。同時に複数枚綴りで関係先へ配布していたものも、電子化の進展により紙ベースでの情報通知の必要性は減少していた。
こうした状況下、当協会とJASTPROは現行業務に併せたD/R見直しを行うための検討を進めた結果、概要以下の変更を実施することとした。(資料5-5-4、5-5-4-2参照)
〔主な変更〕
@ 現行複数枚綴りとしているD/Rを1枚とする
A 使用されていない項目の削除
B フォームのサイズをB4からA4へ変更
C コンテナ情報(CLP)をD/Rフォームに追加
D B/Lを作成するための指示書であることを明確にするため“B/L Instruction”へ名称を変更
B/L Instructionは2006年4月1日に使用を開始し、当面の間は旧D/Rフォームと併用することとした。また、フォーム変更については、使用開始に向けて海貨業界、通関業界をはじめとする関連業界へ事前説明を実施した。
なお、B/L Instructionは貨物・コンテナ情報の100%電子化が実現されるまでの経過的な対応であり、当協会では今後も引き続き関係業界に対して電子化促進を働きかけていくこととしている。