2・6 米国等におけるアジアマイマイガ規制
(1)経緯
2006年2月、米国政府はアジア型マイマイガ(Asian Gypsy Moth:AGM)※1が、わが国のハイリスク港※2から来航する船舶を経由して米国内に侵入する恐れがあるとして、当該船舶に対する検疫規制を2006年5月より導入すると一方的に通告してきた。
同検疫規制によれば、当該船舶は着岸前にAGMの卵塊や成虫が船体に付着していないことを確認するため、陸岸から一定距離の沖合においてAGM検査を受検することとなっていた。ただし、わが国の検査機関が発給するAGM不在証明書を取得していれば、沖合検査を受検せずに着岸できることとされていた。
しかしながら、わが国には、AGM不在証明書を発給できる検査機関が存在せず、そのような状況において当該検疫規制が導入された場合、船舶運航に多大な遅延が生じることが予想された。
そのため、わが国農水省は米国政府に対して、規制導入の延期を求め、また規制内容について日米両国で改めて検討することを申し出た。その結果、米国政府はこれを認め、規制の導入が1年延期され、日米両国において規制内容の詳細について協議を行うこととなった。なお。2006年12月にカナダ政府からも米国と同様にAGMに関する検疫規制を導入するとの通告があり、以降、日米加3カ国によりAGM検疫規制に関する協議が行われることとなった。
同協議では、AGM不在証明書を発給する検査機関の設立が最大の焦点となったが、協議の結果、農水省はAGM検査機関の候補となり得る法人を国内で募集するに止まり、検査員の教育訓練をはじめ、AGM検査機関としての承認については米国またはカナダ政府が行うこととなった。
また、その他の詳細な規制内容についても、2007年3月に3カ国で合意が得られ、米国およびカナダにおけるAGM検疫規制が2007年6月1日より導入されることとなった。
※1 アジア型マイマイガ:東アジアおよび極東ロシアに生息する蛾。木の葉を食い荒らし、森林を破壊することから米国、カナダ等では重大な森林害虫とされている。
※2 ハイリスク港:船舶にAGMが飛来し、船体に卵塊や成虫が付着する可能性が高い港。ハイリスク港は米国が独自の調査により選定しており、次の6港がハイリスク港となっている。
大分、広島、阪南、酒田、八戸、函館
(2)AGM検疫規制の概要
わが国を出港し、米国またはカナダに入港する船舶のうち、次の@、Aの両方に当てはまる船舶については、入港前に、米国またはカナダ当局(米国はCustoms Border Protection(CBP)、カナダはCanadian
Food Inspection Agency(CFIA))による沖合検査を受検することが求められる。
@ 米国またはカナダにおけるハイリスク期間(AGMの卵が孵化可能な時期:表−@参照)に入港する船舶
A 当年および前年において、わが国のハイリスク港にハイリスク期間(AGM成虫の活動時期:表−A参照)中に入港した実績のある船舶
ただし、わが国の検査機関(表−B参照)によるAGM不在証明書をあらかじめ取得している船舶については、沖合検査を受けずに入港することが認められ、着岸後に検査が実施される。
なお、AGM不在証明書は、本邦最終港出港前に取得すればよく、必ずしもハイリスク港において取得する必要はない。ただし、同証明書取得後にハイリスク期間中のハイリスク港に入港した場合は、再度証明を取得しなければ沖合検査の対象となる。
表−@ 米国、カナダにおけるハイリスク期間
<米国> |
地域 |
ハイリスク期間 |
五大湖、 プエルトリコ、 西海岸 |
カリフォルニア州 |
周年 |
五大湖 |
3月1日〜9月31日 |
|
オレゴン州 |
3月1日〜9月31日 |
|
ワシントン州 |
3月1日〜9月31日 |
|
アラスカ州 |
4月1日〜8月31日 |
|
ハワイおよびプエルトリコ |
なし |
|
大西洋沿岸 |
バージニア州ノーフォーク以北 |
3月1日〜10月31日 |
バージニア州ノーフォークの南〜 フロリダ州ジャクソンビルまで |
3月1日〜11月31日 |
|
フロリダ州ジャクソンビル以南 |
周年 |
|
メキシコ湾沿岸 |
アラバマ州、フロリダ州、ルイジアナ州、 ミシシッピ州、テキサス州 |
周年 |
<カナダ> |
地域 |
ハイリスク期間 |
|
カナダ全土 |
3月1日〜10月15日 |
表−A わが国のハイリスク港およびハイリスク期間
大分 広島 阪南 |
6月1日〜8月15日 |
酒田 |
7月1日〜9月15日 |
八戸 函館 |
7月15日〜10月1日 |
表−B AGM不在証明を発給する検査機関
日本海事検定協会 |
新日本検定協会 |
全日本検数協会 |
日本貨物検数協会 |
日本輸出自動車検査センター |
日本穀物検定協会 |