資料1−5−2

 

海洋基本計画  (関係部分抜粋)

 

第2部 海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に構ずべき施策

 

4 海上輸送の確保

 

経済活動や国民生活の水準の維持向上に必要な物資を、適時適切に運送できる効率的で安定的な海上輸送の確保は、貿易量、国内輸送量の多くを海上輸送に依存する我が国にとって極めて重要である。

しかしながら、外航海運業における日本籍船及び日本人船員の激減、内航海運業における船員の高齢化の進行と近い将来に見込まれる不足等により、海上輸送を将来にわたって確保することへの不安な要素が生じてきており、対策が必要である。

また、アジアと欧米との間の主要航路において、我が国の港湾の地位が相対的に低下しつつあるが、国内の荷主にとって、輸送コストや時間の増大等を招くことにつながりかねないため、港湾の国際競争力の強化が必要である。

さらに、船舶そのものや運航上の問題に起因する重大な海難が絶えないこと、船舶に由来する環境への影響は地球的な規模の問題として捉えなければならないこと等から、安全性や環境面の改善等海上輸送の質の向上のための取組も必要である。

 

(1)外航海運業における国際競争力並びに日本籍船及び日本人船員の確保

 

昭和60年頃より、急速な円高の進行に伴うコスト競争力の低下、国際海運市場における競争の激化等によって、我が国の外航海運事業者が、便宜置籍船の導入、外国人船員の採用等を進めざるを得なくなった結果、日本籍船及び日本人船員が激減した。

現在、多くの海運国では、自国外航海運業の国際競争力向上を目的とする施策を強化しており、我が国の外航海運事業者は国際競争上厳しい状況にさらされているため、日本籍船及び日本人船員は依然として減少傾向にある。

こうした状況は、海上輸送に多くを依存している我が国にとって、非常時における海上輸送の確保等の面から問題があり、外航海運業の国際競争条件の均衡化を図るとともに、日本籍船及び日本人船員の確保を図る必要がある。

このため、日本籍船及び日本人船員の計画的増加に取り組む我が国の外航海運事業に対する日本籍船の運航トン数に応じた利益の金額に基づく所得計算を選択することができる課税の特例(トン数標準税制)の創設に取り組み、日本籍船の数を平成20年度からの5年間で2倍に、日本人外航船員の数を同じく10年間で1.5倍にそれぞれ増加させるための取組を促す。

 

(2)船員等の育成・確保

 

高齢化しつつある内航海運業の船員の将来的な不足を回避するとともに、外航海運業における日本人船員の計画的な増加を確実なものにするため、船員を始めとする海運業従事者の育成・確保等が急務である。

しかしながら、国民の海洋に対する関心が高いとはいえず、海に関わる職業の意義や評価に対する認識も高くないこと、内航海運事業者の多くが規模の小さい事業者であり、労働条件面での魅力にも乏しいこと等から、若者が職業として海運業を選択することはなかなか期待できない状況にある。

このため、青少年等の海洋に関する興味を喚起し、正しい知識と理解を深めるための取組を推進するとともに、海運業の職業としての魅力を向上させるため、事業者のグループ化による経営基盤の強化、船員の労働環境の向上を目指した時間外労働に係る限度基準制度の導入やILO海事労働条約の締結に向けた体制の整備等を推進する。さらに、退職海上自衛官や資格を有する女性等が、船員として就業するための環境整備等を推進する。

また、質の高い船員の効率的な育成を実現するため、船員養成課程における乗船実習内容の見直し、一般大学や高校等の出身者が海技資格を取得するための制度の更なる拡充等船員教育システムを再構築する。さらに、就業後の技能向上やキャリアアップを図るため、上級資格の早期取得や小型船から大型船への配置転換等を容易にするための環境整備、船舶管理等に関する資格制度の創設等を推進する。

 

(3)海上輸送拠点の整備

 

海上輸送ネットワークの拠点である港湾に関しては、海上輸送と陸上輸送の結節点の機能を含めてその効率化を図り、利用者にとって利便性の高いサービスを提供する必要がある。

国際海上輸送に関しては、コンテナ輸送において競争力を増している周辺アジア諸国の港湾との間で厳しい選別が行われる状況にあるため、近年のコンテナ船の大型化に対応した大水深の長大岸壁を有し、円滑な荷さばき等が可能な高規格コンテナターミナルの整備等を推進する。また、拡大しつつある我が国と周辺アジア諸国間の物流に対応して、定時性・迅速性に優れたフェリーターミナル等の整備を推進する。さらに、鉄鉱石、石炭等を運搬する船舶の大型化に対応した港湾機能の強化を進める。あわせて、輸出入や港湾の利用に関わる様々な手続きの簡素化、電子化等によるサービスの向上と保安体制の強化等を推進する。

一方、国内海上輸送に関しては、地域ごとの産業の特性や輸送ニーズに応じた物流拠点施設整備等を推進する。

 

(4)海上輸送の質の向上

 

より安全性が高く、より環境負荷の小さな質の高い海上輸送を実現するためには、安全面、環境面での基準を満たした船舶に、適切な技術を持った船員が配置され、事業者の運航管理が適切に行われる必要がある。

そのため、国際機関での協議を通じ、船舶の設計、建造、運航、解体に関わる各種の基準の策定と不断の見直しを行うとともに、検査や監査の確実な実施、海上安全の啓発、航路の安全確保等の施策を着実に実施する。また、経済的に最適な航路の選択や航行上の危険回避を容易にするための情報の活用、船舶から排出されるバラスト水による生態系への影響の防止等新たな課題に対処するための技術開発等を推進する。