5・2 港湾整備関係
5・2・1 交通政策審議会港湾分科会の動き
交通政策審議会港湾分科会では国土交通大臣の諮問に応じて以下の項目が審議されることになっている。
1)
港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針
2)
港湾計画
3)
港湾整備5ヵ年計画
4)
特定港湾施設整備事業の整備計画
5)
広域臨海環境整備センターの基本計画
6)
港湾及び航路に関する重要事項
当該期間(2008年4月〜2009年3月)に開催された港湾分科会(第30〜34回)においては、主に今後の港湾政策の基本となる『港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針』並びに港湾計画改訂・一部変更についての審議がおこなわれた。当協会からは港湾物流専門委員会委員長が委員に就任し、船社意見の反映に努めた。
港湾分科会での主な審議内容
第30回(2008年5月30日)
@港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針(審議)
第31回 (2008年7月4日)
@
港湾計画(審議・承認)
・直江津港(一部変更)
A
平成20年度特定港湾施設整備事業基本計画(案)(審議・承認)
B
港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針(審議)
第32回 (2008年10月9日)
@港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針(審議・承認)
A防災・保全部会の審議状況について(報告)
第33回 (2008年11月9日)
@ 港湾計画(審議・承認)
・仙台塩釜港(改定)
・平良港港湾計画(改定)
・
徳島小松島港(一部変更)
第34回(2009年3月9日)
@港湾計画(審議・承認)
・茨城港(改定)
・川崎港(一部変更)
・横浜港(一部変更)
・名古屋港(一部変更)
・堺泉北港(一部変更)
・北九州港(一部変更)
A地球温暖化に起因する気候変動に対する港湾政策のあり方について(報告)
5・2・2 港湾施設使用料等減免に向けての要望
未曾有の世界的な経済危機による輸出入低迷のため、平成20年末より国内主要港湾の貨物取扱量は急激に減少した。この予想を超えた事業環境の変化に対応するため各船社は航路規模の縮小、再編、休止、係船等に取組み、特にコスト面では運航経費、船舶経費、店費等の削減を進めたが一向に経営の改善は進まなかった。当協会では制度面での港湾利用料削減に向け、国土交通省、港湾管理者、埠頭公社(会社)に施設使用料、入港料等の減免が可能となるよう財政支援措置を要望した。
5・2・3 外貿埠頭公社の民営化問題
スーパー中枢港湾選定委員会のワーキンググループとして設置された「港湾の管理・運営のあり方に関する検討部会」では、埠頭公社のあり方を中心にスーパー中枢港湾の適切・効率的な管理運営について検討がおこなわれた。5回に亘る議論を踏まえて平成17年3月に既存公社埠頭を含めたスーパー中枢港湾全体の国際競争力強化のための方策が取纏められた。
国土交通省港湾局は引続き平成17年8月に港湾の管理・運営体制の改革の一手として公社改革のスキームを発表した。その骨子は、効率的な埠頭運営を可能とする公社民営化と埠頭貸付料低減化を図るための公社資産の下物部分(岸壁・埠頭用地)の公共化である。国の平成18年度予算では埠頭公社が民営会社に移行する場合の支援措置として、既存公社と同様の無利子貸付制度の新設、税制特別措置等が認められた(共に民営会社化後10年間)。
一方、最大の焦点だった下物部分の公共化等は認められず、民営化を進めるための制度が完全に整わなかった。しかしながら平成18年10月1日に「外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律」(承継法)の一部を改正した「特定外貿埠頭の管理運営に関する法律」が施行され、埠頭公社の民営化が可能となった。
東京港埠頭公社はこの方針に基づき、平成20年4月1日に株式会社化をおこない、東京港埠頭(株)となった。当協会は同社に非常勤(社外)取締役を派遣して、経営状態を監視すると共に埠頭運営の効率化及び借受料低減化に向け意見している。又、東京港以外の埠頭公社がスムーズに民営化(株式会社化)できるよう国に対して必要とされる財政支援措置を要求するなど埠頭借受者及び利用者の立場から意見の反映に努めた。
5・2・4 京浜港広域連携推進会議
2008年3月東京都、横浜市、川崎市は3都市が別々に港湾管理者を務める京浜3港(東京港、横浜港、川崎港)について、将来的にポートオーソリティー的な管理体制への移行と3港統合を視野に、包括的な広域連携策の検討に入ることで基本合意に達した。
1950年に制定された港湾法では、港湾管理者は港務局(ポートオーソリティー)又は地方自治体と定められた。しかしながら財政難等で東京湾、大阪湾とも港務局は実現せず、自治体単独管理の複数港湾が分立する状態が続いてきた。今回の連携は地方分権化、港湾民営化の流れに添う取組みであり、地方自治体が大同団結して港湾経営の効率化を目指すというビジョンには賛同できる。
9月18日に開催された東京都知事、横浜市長、川崎市長の会談で以下の合意がなされた。
1. 広域連携推進体制の整備
(1)京浜港広域連携推進会議の設置(H20年11月)
(2)A京浜港経営協議会の設置
2. 基本合意に基づく事業の実施
(1)はしけ輸送の拡大による環境対策(H20年11月)
入港料の全額免除
(2)3首長によるトップセールスの実施
(3)Bコンテナ船入港料の一元化(H21年4月)
3.京浜港の共同ビジョンの策定
(1)京浜港の港湾経営と整備方針の策定
(2)ポートオーソリティーの検討
当協会には京浜港広域連携推進会議への参画要請があり、飯塚副会長が委員として参加することとなった。飯塚委員は港湾の利用者として3港連携に賛同しつつ、コスト・サービスの改善が最優先されるべきとの意見を述べた。
1. 第1回(H20年11月10日 於東京都庁)
事務局より3港の現状、今後の検討課題について説明がなされ、その後議論の方向性について意見交換をおこなった。
2. 第2回(H21年3月30日 於ワークピア横浜)
事務局より京浜港共同ビジョンのフレームワークが示され、その後意見交換をおこなった。フレームワークの構成は以下のとおり。
(1) 京浜港を取り巻く環境変化
(2) 京浜港の評価
(3) 京浜港の目指すべき姿
(4) 京浜港ビジョンの視点と施策の方向性
検討すべき事項として以下の項目が示された。
(1)国と地方の役割分担の明確化(地方による港湾施設の整備・運営の一元化)
(2)港湾管理者の財政基盤の強化(国の予算の集中的配分や交付金化、民間事業者
の港湾整備への参画の拡充等)
(3)港湾管理者の権限強化(規定の基準にとらわれない柔軟な港湾計画の策定、国庫補助施設や国有施設の柔軟な活用等)
(4)管理運営の効率化、合理化によるコストの低減化、柔軟な施設運営が可能となる港湾管理の組織体制の構築等
(5)港湾の管理運営に関する規制緩和(港湾法等の改正)
5・2・5 港湾施設の出入管理システム
保安と物流効率性の両立のため、出入管理の迅速化・効率化が重要であるとの認識のもと、港湾施設の利用者・管理者等との意見交換を行い、その上で解決策を検討することを目的に、平成16年8月から平成19年3月までの2年半に亘り開催された「港湾施設の出入管理の高度化に関する検討会」の検討結果が取纏められ、国交省は実用化に向け平成20年度にシステム構築のための予算を計上した。
その構想では国が出入管理システムを整備・運営するが、その使用料をシステムの利用者から徴収を義務づけるべく港湾法を改正することが予定されており、システムの利用者とは「施設の管理者」(公社埠頭の場合は埠頭の借受者)とされている。システムの利用はオプションとされたが、システムの使用料が明確に提示されないまま、又委員会で指摘されたシステム運用のための費用負担方法、共通カード所持者に対する信用付与の仕方、トラックドライバーへのカードの普及方法等の運用面での課題が解決されないまま性急に導入を進めることについて、当協会は反対であり国交省に対し種々の課題の解決策を示すよう求めている。
以上