7・3 外航日本籍船の日本人船・機長配乗要件の撤廃

 

当協会は、外航日本籍船の国際競争力を強化するため、2003年から2004年にかけ、構造改革特区制度を利用して「わが国外航商船の第二船籍制度の創設」を要望した。その中では、特に外航日本籍船に係る日本人船・機長配乗要件の撤廃を求めていたが、特区制度での措置は困難とする政府側の立場が変わることはなく、同制度を活用しての要望は実現することはなかった。

そのため当協会は、全日海との協議を通じて配乗要件撤廃の可能性を模索していくこととし、20053月、全日海との間で「船員・船籍問題労使協議会」を設置して配乗要件撤廃問題と日本人海技者の確保・育成策についての検討を開始した。その後、協議会は、同年6月に同撤廃の実現に向け国土交通省(以下「国交省」)に申入れを行うことに合意し、翌7月に国交省に対し、同撤廃に係る船員法等関連法令や外国人承認船員制度上の諸問題の解決に着手するよう労使共同で申入れを行った。(船協年報海運2005参照)

これを受けた国交省は、同年9月、官労使と学識経験者をメンバーとする「船・機長配乗要件の見直し等に関する検討会」(座長:野川 忍 東京学芸大教授)を設置、20064月の第4回検討会において、「配乗要件撤廃に係る法的問題はない」との結論が出された。同検討会の結論に基づき国交省は、同年7月の交通政策審議会海事分科会において、「2007年度からの新規外航日本籍船の建造・登録に間に合わせるべく船・機長配乗要件の撤廃に関連する作業に着手する」との報告を行った。(船協海運年報2006参照)

その後200612月の自民党の平成19年度税制大綱において、トン数標準税制を「平成20年度税制改正において具体的に検討する」と明記されたことを受け、20072月から開始された交通政策審議会海事分科会国際海上輸送部会で、トン数標準税制と日本籍船・日本人船員の増加策が関連付けられて議論が行われることとなった。このため、配乗要件撤廃の環境整備は同部会での検討を待つこととなったが、同年6月末の同部会中間とりまとめでは、外航日本人船員の年齢構成を考えると、「配乗要件を堅持すると早晩船・機長の適材が不足し、かえって日本籍船の増加の妨げになる可能性が大きく、日本籍船の増加を促進するためにはむしろ(配乗要件)撤廃は必要」とされた。

議論がこうした方向で収束する中、国交省は同年614日に通達を発出、外国人承認船員の就業範囲を船・機長まで拡大するとともに、同月末には一回目の外国人船・機長の承認試験を実施、これによって外国人全乗の外航日本籍船の実現が制度上可能となった。(船協海運年報2007参照)

その後、20082月、トン数標準税制等に関する「海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案」の閣議決定がなされたが、道路特定財源問題の影響で国会審議入りが遅れたため、配乗要件撤廃の実現にはさらに時間を要することとなった。同法案は同年5月にようやく審議入りし、月内に成立、同年66日に公布された。これを受け、本問題についての各社と全日海との具体的協議が開始されることとなった。これにより、同年8月に初の外国人全乗の日本籍船が誕生、その数は同年12月末日までに11隻に達することとなった。