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オピニオン

2005年4月

「リスクマネジメント」

日本船主協会 常任理事
飯野海運株式会社 代表取締役社長
杉本 勝之

地震の発生が続いている。日本では昨年10月に新潟で、今年3月に福岡で大きな地震が発生した。さらに昨年12月には世界的に注目を集めたインドネシアのスマトラ島沖地震、今年3月にはその震源地の近くでまた大きな地震が発生した。これだけ短期間に大きな地震が発生していることから、地球が再び活動期を迎えているのではないかという人もいる。
 地震の船への影響は、水深が深い大洋航行中であれば津波が発生しても、大きなうねりを感じるだけで大きな被害は発生しない。しかし、水深が浅い沿岸や狭水路を航行している場合や岸壁に係船している場合は、座礁や岸壁接触など大きな災害を引き起こすことになる。
 当社は海運業の他、不動産賃貸ビル業を営んでいる。福岡の地震ではビルの窓ガラスが道路に散乱した光景がテレビで放映された。他人事ではないので気になった。地震は、地震そのものによる被害に加え、大きな二次災害が発生する虞があるので恐ろしい。日本人は地震と隣りあわせで生きているので、何時起るかもしれないとは思っていても、個人レベルまで準備が万全かと問われると疑問が残る。
 地震のことを気にしていたら3月14日にマラッカ海峡で日本籍のタグボートが海賊に襲われ、船長、機関長、フィリピン人乗組員が拉致された。シンガポール海峡を通過する船舶は年間7万5千隻位、うち日本関係の船舶は2割弱といわれている。同地域の海賊問題は、海運業界では日常的に発生するリスクのひとつと認識されているが、今回日本社会で改めて海賊という海上犯罪に焦点があてられたことは大きい。今後、マラッカ海峡の安全が改善されることを期待したい。
 会社をリスクにさらす問題は、地震や海賊だけではない。ライブドアがフジテレビに仕掛けた敵対的買収が連日報道され、日本企業は敵対的買収に無防備という批判も出された。敵対的買収とは突然第三者が大株主になって会社を占有しようとするリスクである。アメリカでは1980年代に敵対的買収の嵐が吹き荒れ、1990年に「野蛮な来訪者」というRJRナビスコを舞台に繰り広げられた買収劇のノンフィクションが販売されて話題を呼んだ。
 リスクには様々なものがある。そして会社経営には様々なリスクがつきまとう。そのリスクをマネージすることが企業経営者に求められている。教科書的には、「不確実性に関わるリスクを取りながら、戦略的な判断をして利益を追求する機能を担うのが、新しい企業経営パラダイムのもとでの企業経営者の役割」ということになる。腕組みをして考えている時間はない。

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