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2006年3月

外航海運から見た日本人船員教育システムの見直しについて

日本船主協会 常任理事
新和海運株式会社 代表取締役社長
筧 孝彦

国土交通省は、来年度から船員教育のあり方に関する見直し議論に着手することになった。これは航海訓練所の民間開放構想(規制改革・民間開放推進会議答申)や海技大/海員学校の統合など、船員教育システムを取り巻く環境変化・日本人船員の役割変化等を踏まえ、「従来の船員教育システムが現在の船員環境に適しているのか否か」について、関係者による検討会を立ち上げ、包括的な議論を行うものである。
 こうした動きの背景には、戦後の復興それに続く高度経済成長を海上輸送の面から支えたのが日本海運・日本人船員であり、人材育成面では2大学5高専と複数の船員教育機関がこれを担ってきたが、外航海運が歩まざるを得なかった「グローバル化」という時代の大きな流れの変化に、これまでの船員教育が追従しきれていないという認識がある。
 1980年頃までは、入学すればその多くが船員になるという構図であったが、1985年のプラザ合意以降加速した日本人船員の国際競争力喪失という現実の中で、船員としての就職人数が卒業人数を大幅に下回るという状況が今日に至るまで続いている。即ち、100人規模(外航)/年の需要のために、7校+αが昔と同様に船員教育機関として存在しており、結果として、志望者の多くが、船員教育機関であることの認識が薄いか、あるいは全く無いままに受験・入学するというのが実状ではあるまいか。また、練習船について言えば、航海訓練所は帆船2隻を含め5隻を保有、他の船員教育機関もそれぞれに練習船を保有しているが、諸外国では公的機関が練習船を保有するのは例外的で、ほとんどは一般商船でのCADET教育となっている。
 規制改革・民間開放推進会議では、「過去20年の間、外航海運における日本人船員の割合が大幅に低下する一方、日本人船員の果たすべき機能は、従来の船舶の運航要員であることのみにとどまらず、外国人の船員や外国人を含む船舶管理要員およびその組織の管理・運営等へと大きく変貌しつつあり、また、その求められる資質・能力に関しても、マネージメント能力やIT技術が不可欠となるなど、その環境は大いに変化している」と指摘している。
 以上の経緯・状況から、少子化時代における青少年の職業意識の変化等も踏まえつつ、外航海運の実情に即した日本人船員教育システムの再構築が、早急になされることを期待したい。数年前の国立大学法人化の際に、旧東京・神戸商船大学がそれぞれ別のパートナーを選んだが、これがベストであったのであろうか。また、「国際標準という観点からの日本の海技免状のあり方」についても並行的に議論してもらいたい。

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