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オピニオン

2006年4月

「新社会人に期待する」

日本船主協会 常任理事
第一中央汽船株式会社 代表取締役社長
野村 親信

2月に発表された厚生労働省人口動態統計によると、昨年1年間の出生者から死亡者数を引いた人口が 4,361人のマイナスとなったとのことである。1899年(明治32年)にこのような統計を取り始めてから、初めて人口がマイナスに転じたことが報じられていた。この数値には、日本に住む外国人および外国に住む日本人が含まれており、これを日本に住む日本人に限定すると、昨年の日本の人口の減少幅は2万人程にまで拡大するそうである。
 若手労働人口の減少、活力ある社会の維持等々少子高齢化に伴う問題は、これから益々深刻になってくる問題として最近様々な場で論議がなされているが、我々海運の世界も要員不足ということでは同様であろう。目の前に控えた新造船の大量竣工に備えての船員の確保は新規船員ソースの開拓等、それぞれの会社の努力によりどうにか目鼻がつきつつあるが、日本人海技者の確保/養成の問題は依然として長期的課題として残る。更に、欧米の数倍のスピードで高齢化が進んで行くと言われている我が国においては、技術スタッフのみならず陸上スタッフについても適切な確保/育成を怠ると会社の未来を担う若手労働力の減少を招くこととなってしまう。我々はこれまでになく、未来を十分見据えた要員計画を立てて行かなければならない時代を迎えている。
 このような将来の要員に対する不安がある中、今年も新入社員を迎える季節となった。この会報が配布される頃は、各社ともそれぞれ、新入社員研修等を実施されている頃であろう。要員の確保と同様に、会社の未来を託す彼らに何を求め、どのようなスタッフに育てて行くかも非常に重要な問題である。
 海運各社のwebsiteを拝見すると、営利企業としての経営/サービスに対する考え方が紹介されていると共に、それぞれの経営理念が社会貢献、社会的使命、社会からの信頼という文言で表現され、記載されている。
 グローバルに展開する企業として、今後益々これらに対する対応が強く求められることになるであろうが、欧米社会においては、企業の社会への貢献ということが相当以前より重要視されてきた。かって欧米においては、人種問題、家族/教育システムの崩壊、犯罪の増加等で社会に疲弊が生じ、その原因の一端が企業の活動自体にもあるとされたことより、その後、企業も積極的にこのような問題に取り組み、結果として、徐々に社会貢献/社会的使命という企業の意識、また企業で働く個々人の意識も高まって行ったと言う。
 昨年来我々の廻りでも、マンション構造計算擬装問題、ライブドア問題、航空会社の整備不良問題等々、効率/拝金至上主義経営によって引き起こされた問題が世間を騒がせている。日本の企業/企業人にも一部このように企業倫理に疲弊を来たしている部分があるということを十分認識し、今後の企業活動に活かして行かなければならない。
 これから社会人となる新人にはまず、正しい意識を持ったスタッフが会社/社会を支え、真の発展に寄与できる。このような当たり前のことをまず学び取って欲しいものである。海運の世界は、特にグローバルな世界であり、我々の活動に対する要求も国、地域、社会等から様々であり、且つ、厳しいものである。それぞれが活動の意義を見失わず、世界から信頼される日本海運の発展の一翼を担ってくれることを切に望んでいる。

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