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2006年12月

ISOについて

日本船主協会 常任理事
飯野海運株式会社 代表取締役社長
杉本 勝之

当社は、品質マネジメントシステムの国際規格(ISO9001:2000)および環境マネジメントシステム(ISO14001:2004)を取得している。その品質・環境の方針として、「・・・船舶の安全運航による貨物の安全輸送並びに賃貸ビルにおける安全でかつ快適な賃貸スペースの提供に対して信頼性の高いサービスが提供できること(中略)を理念に、全従業員が一丸となり、業務を効果的、かつ確実に遂行することにより」目的を達成すると謳っている。
 その実際は、まず管理する対象を決め、対象の方向性として目標を定め、目標達成ができるようなPDCAの活動を行い、業務の継続的改善を行うというものだが、今は業務フローにあわせた「文書管理」の対応を行っている段階である。上記目的の達成が現実のものとして成果が現れているのかと問われれば、まだまだといわざるを得ない。
 当社グループでは最初に船舶管理会社のイイノマリンサービス社がISOを取得した。彼らは、ISO取得以前にISMコード対応を実施しており、ISOの要求項目をISMコードにリンクすることが上手くでき、後から取得した本社の海運部門や不動産部門に比べると、対応が早かった。管理部門はじめ全社をあげて行うとなると、Keyとなる「文書管理」をどうやってやるかということになるので、ITをうまく活用しなければ達成できない。従って、現在いかに文書管理をIT化するかということに注力している。
 ところで、最近、内航海運業法が改正され、運行管理規程が安全管理規程に改定された。それを見ると、経営トップの安全に係るコミットメントとその実施に対する責務の明示、PDCAサイクルの明示化、コンプライアンス、文書管理、記録の作成および管理の実施等が求められている。その具体的実施はISOと同じ考え方で対応できると思われる。
 また、今年会社法が施行され、内部統制システムの構築に焦点があたっている。当社は、コーポレートガバナンス・内部統制システムの考え方についてはすでに開示しているが、具体的実施策は安全管理規程への対応同様ISOの考え方を適用することになる。今後JSOX(日本版SOX法)の要求基準が明らかになってくるが、その対応策も同じである。
 これら複雑化する最近の企業への要求に対しては、ISOの考え方をベースにして具体策を実施していけば基本的に対応可能ではないかと考えている。しかし、ISOの適用を推し進めていけば、これまでの業務の手法そのものを変えることになる。それは現場にいる従業員には一時的に作業量が増えることになる。なかなか受け入れられにくいかもしれないが、越えねばならないハードルである。

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