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2007年4月

国内定期航路事業の現状と今後

日本船主協会 常任理事
栗林商船株式会社 代表取締役社長

新年度を迎え、国内定期航路の集約・再編が一段と進んでいる。
 国内の定期航路事業には太宗貨物をベースに、在来船から発展した形で続いているRORO船やコンテナ船と、戦後自動車の発達と同時に旅客船として生まれ、道路の一部という概念で発達したフェリーがある。この二者はこのように誕生の経緯の違いから、同じ国内定期航路業界という世界の海運界から見れば非常に小さなマーケットであるにもかかわらず、まったく別なものとして発展してきた。特に内航海運業界が船腹調整制度を行っている間に、フェリーはこれとは別枠の世界で旧運輸省から免許を得る形で新規航路を開設し、また大型船を建造して旅客・貨物を含めた定期航路の発展に大いに寄与した。
 その後規制緩和の時代となり、船腹調整制度も貨物船とフェリーとの需給調整も終わり、RORO船が大型化していく中で各航路は本格的な競争の時代に入ることになる。しかしこの時期は国内経済の低迷期であったため、運賃の大幅下落と他の輸送手段、特にトラックとの競争はさらに激しさを増し、その後の燃料コストの大幅な上昇という挟み撃ちに遭いながら現在を迎えている。
 このような困難な状況を乗り越えるべく、集約・再編の第一段階として平成14年頃から各航路で共同運航が開始され、さらにはバンカーサーチャージの導入など各社必死の努力が続いている。しかし今回の燃料コストの上昇はC重油2万円の時代に計画された船舶には如何とも対応しがたく、昨年後半からこの4月に向けて、航路の休止や寄港地の変更を含めた更なる集約・再編が進むこととなった。
 このような流れは、株式会社が何の補助も受けずに営利事業として航路を開設している現状からすれば当然のことなのであろう。ただ、単純に経済性だけを追求していったとき、国内定期航路は今後どのように存続していくのだろうか。世界経済の発展とは離れて国内物流の伸びが大きく望めない現在、基幹航路以外の難しさは今後も変わらないであろう。
 地域のインフラとしての意味合いが強く、非常に公共性の高いこの事業が、荷主やフォワーダー、積揚地にかかわるすべての関係者に支えられて来ていることを忘れ、必要以上に自己の利益を追求するとき、内航海運に与えられている大きな社会的使命を自ら放棄することにならないか、判断の問われるところである。
 国内定期航路が、航路の維持管理と安全輸送に責任の持てる企業によって再び隆盛を極め、更なる社会貢献ができる時代が来ることを願うばかりである。

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