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オピニオン

2007年6月

「中国のニュースで感じたこと」

日本船主協会 副会長
新日本石油タンカー株式会社 代表取締役社長
杉山 暎一

少子高齢化が進む日本とは裏腹に人口13億人を擁する大国中国の発展は、留まることを知らない。
 ここ数年マーケットの牽引役が、この中国であることに異論を挟む人は居ないであろう。その中国に関する最近の出来事としてディズニーランドに瓜二つの遊園地に関するニュースが報じられた。誰が見てもディズニーキャラクターと思しきネズミや日本の人気アニメキャラクターが遊園地を闊歩する姿に眉をひそめたり、それを通り越してあっけにとられたりした人も多かったのではなかろうか。
 もうひとつは先ごろ上海で開催された自動車ショーで現地企業の展示車が日本やドイツで生産される車のスタイルと瓜二つであると報じたニュースである。
 もっとも格好は一人前であるが、信頼性、安全性の評価については言及されていない。しかし数年先には日米欧のカーメーカーにとって大いなる脅威となることは間違いないであろう。
 どちらのニュースも、いわば模倣を題材にしたものであり、中国のWTO加盟に絡み、もう少し何とかならないのかという論調であるが、後者については、日本の自動車産業もかつては同じ道を辿った、すなわち過渡期であるのだから目くじらを立てるほどのことでもないという一部識者の論調が紹介されていた。
 ところで、わが国を支える海運業界であるが、自国船員の確保が急務になっている。日本と外国の国際間物流を支えている主役は海運であり、それに従事する船員のマジョリティは外国人である。これらの外国人船員への依存なしに日本の立国は困難な状況にある。日本の安全上の観点から日本籍船の維持と拡大また日本人船員の確保は、先ずもって真摯に取り組むべき海運業界としての重要な課題であるが、同様に優秀な外国人船員の確保もまた大きな課題である。

 そこで重要なことは、優秀な外国人船員育成であり、今後の維持発展のための教育と訓練を実施し、技術の継承をさらに進める必要があると思う。大いに模倣してもらう機会を提供し、信頼性と安全性を確実に身につけてもらうことが日本の国益にとって大変重要なことであるとともに、世界全体のクオリティーシッピングの推進につながるものと信じている。
 また、海運が一層魅力的な業界として発展を続けるためにも、海運に携わる海陸員の次世代、その次の世代への技術の伝承ができるよう海運先輩諸氏の模倣からスタートして習得した知恵を引き継いでゆける環境整備を進めることが大事であると思う。

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