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2007年9月

比国船員の雇用市場化への対応
−枯渇感への過ぎた反応への警鐘−

日本船主協会 常任理事
株式会社キーマックスマリタイム
代表取締役兼CEO  栢原 信郎

「職員の船員費はこのままの激しく上昇を続けるのですか?」との問に、私は「2012年迄には落ち着きを取り戻す事が出来ます」と多少の豪語を含んだ回答をしております。

 2008年改定のITF新賃金は本文書の掲載時点ではIBFに於いて既に決着を見ているものと思いますが、23名の船員構成による2007年のTOTAL COST($ 50,787-)の10%UPのITFの強い要求を巡って(現在)激しい論議がIBFにおいて行われております。しかしながら我が国商船隊に乗り組む外国人船員の75%を占める比国人の船員費だけをみますと、今日現在、職員においては2007年賃金の10%UP額をはるかに越え、船主別に異なった賃金体系による雇用が実態化しているのが現状です。比国船員(職員)の雇用賃金は既に、韓国船員やインド船員、東欧船員と同様に市場化してしまっていると云う認識に改めざるを得ない状況にあります。ITFの最低賃金を抑制する事により船員の賃金上昇を押さえるだけでは事はすまない時代に入り、リーズナブルな賃金による船員の雇用確保の為には新たな施策が求められていると云う認識の下で船員政策に取り組む必要があります。
 まず求められるのは、現在の市場船員費が供給国の経済状況等に即した必要実態を反映しているかと問われれば、「否」であるとの認識です。現在の賃金競争による争奪状況は、オイルショック時にトイレットペーパ-の買い占めに走った日本の主婦の狂騒状態に似た現象と云っても過言ではありません。 行き過ぎた枯渇感が、「優秀職員の雇用確保には他社よりさらに高い賃金を支払う事が必要」との誤った考えを生み、必要以上の賃金競争が行われているのが実態です。

 日本船団としては、今後は【節度をもった日本船主団の共通賃金体系を組み、過度な賃金競争を止める事】、職員の需給バランスを正常化する為に、【職員候補の掘り起こしによる育成、東南アジア船員の囲い込みと定着化】の策に取り組むべきであります。それらの策が実行されれば、職員不足は解消され、賃金の過当競争は2012年迄にはなくす事が出来ると考えます。
 日本船団は各社別に努力の続けられている船員確保策とともに、協会が国船協とも一致協力しての協調施策を講じ実行する事が必要とされるのだと強く思います。それにより過度な高賃金による職員獲得競争によらずとも、安定した優秀船員の確保は必ずや5年以内に実現出来るものと確信致します。

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