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オピニオン

2008年10月

「環境問題と海運」

日本船主協会 副会長
日本郵船株式会社 代表取締役社長
(日本内航海運組合総連合会会長)
宮原 耕治

 今年の夏、日本各地で局地的なゲリラ豪雨に見舞われ、がけ崩れなどの土砂災害や洪水によって多くの被害がもたらされた。世界各地でも、強いハリケーンやサイクロン、また異常高温や干ばつなど異常気象による災害が頻発している。そして、このまま温暖化が進めば、このような異常気象が更に進む可能性が指摘されている。これら地球温暖化をはじめとする環境対策は、今世紀最大の問題として、地球上で経済活動を営むすべての企業が早急に対処すべき重要な課題だ。

 大気汚染防止に関しIMO(国際海事機関)は、今年4月、船舶から排出されるSOxならびにNOxの規制を強化することを決めた。このうちSOxについては、燃料油1KT当りの硫黄分が2015年には指定海域で0.1%以下に、また2020/2025年には一般海域で0.5%/KT以下に制限される。エンジンで燃焼している燃料油は硫黄分の高いC重油といわれる残渣油だが、SOx規制が0.5%の段階になると、溜出油もしくは脱硫した残渣油といったより高品質の重油を手当てする必要があり、船社が調達する燃料コストが2倍に膨らむ可能性がある。コスト削減のためにも画期的な技術革新が求められる。

 次にIMOが早急に取り組まなければならない課題は、CO2など地球温暖化を招く温室効果ガスの排出削減の枠組み作りだ。来年12月、デンマークで開催される気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)までにIMO自らの手で結論を出すことが求められており残された時間は短い。海運は元々環境にやさしい輸送手段である。また、私たちは世界一の技術水準を持つ日本造船界の方々とともに、燃費効率の向上など技術革新に取り組んできた。それでも国際海運からのCO2排出量は約8.5億トン(2007年)と世界全体のCO2排出量の約3%を占めている。さらに今後途上国の経済発展に伴い世界の船腹量が拡大するなか、地球温暖化の抑制にむけて我々国際海運の果たすべき役割は大きい。着実に成長する世界経済の担い手である国際海運の活動を阻害することなくCO2排出削減に効果をあげるためには、先進国、途上国を問わず、全ての国がIMOの場で真剣に討議し、輸送単位当りの削減計画を策定した上で、これを例外なく全世界一律に適用する枠組みが期待される。

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