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オピニオン

2009年2月

Change

日本船主協会 常任理事
飯野海運株式会社 代表取締役社長
杉本 勝之

 Change(変革)をスローガンにしたオバマ米大統領が就任した。就任セレモニーを見ていると列車での移動、宣誓に使う聖書など第16代大統領リンカーン氏の故事にならっていた。南北戦争という国家分断の危機の中、奴隷解放を行い、ゲティスバーグ宣言で人民の政府を謳い上げ、国家の再統合に身を捧げた同氏に自らを重ね合わせ、国民の団結を促したかったのだろう。そしてファーストレディとなったミシェル夫人の手を取りながらの徒歩でのパレードは9.11で脅かされた米国の安全と威信を取り戻すのだという決意を内外へアピールしているように見えた。注目すべきは彼の舵取りで米国のどの部分がどう変わるのかという点だ。国際政治の多極化の流れを容認するのか、ユニラテラリズムと訣別できるのか、特に中東政策は特に気になるところだ。彼はその就任演説の中で、「America is a friend of each nation, and every man, woman and child who seeks a future of peace and dignity. And we are ready to lead once more.」と言っている。経済問題も待ったなし、初仕事は金融錬金術の後始末。問題を実体経済に波及させ、世界を巻き込んだ責任を感じているのであれば米国は自らを変えなければならないだろう。「What is required of us now is a new era of responsibility.」この言葉はとても重いものだ。  
 さて、変わらねばならないのは我々海運業界も同じである。いつか落ちる、もうすぐ下がると心配しながら4年間、うれしい誤算と言い続けてきたが、いざ落ちてみれば想像を超える大暴落。最初は行き過ぎた過熱市況がOvershootされたものと考えられていたが、実体経済の傷の深さを知るに、厳しい現実を突きつけられた形だ。あと2年は続くと言われて暗い気持ちになる。しかし慌てることはない。これはいつか来た道、構造不況業種と言われたのはつい数年前のことだ。市況変動への対応法は未だ忘れてはいない。否応なく変わらざるを得ない時の潔さは過去の経験からこの業界が持ち合わせている強みであろう。
 しかし、それだけで良いのか、そのような受身の姿勢でよいのかという焦燥感が残る。パラダイムシフトと言われた世界の変化はその速度を増しこそはすれスローダウンすることはないだろう。その激流を乗り切るために、今まで通りの対応で良いのかどうかもう一度考えなければならない。歯を喰いしばって守らねばならないことと、躊躇せずに変えるべきことを見極める必要がある。それには変化を恐れず自らを変えていくことが必要だ。勇気と揺るぎない信念をもって。我々にそれができるか? Of course, Yes we can !

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