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オピニオン

2009年4月

「船とリサイクル」

日本船主協会 常任理事
第一中央汽船株式会社 代表取締役社長執行役員
野村 親信

 最近、「エコ〜」という言葉が頻繁に耳目に触れるようになった。エコカー、エコバッグ、エコライフ、エコ住宅、エコツアー等々。ゴミの分別作業は既に日常生活に溶け込み、また、各種リサイクル事業も立ち上げられて資源の有効活用が図られている。環境問題への関心が一般社会に浸透しているということであり、歓迎すべきことである。
 我々海運業界でも、海洋・大気汚染防止を始め、様々な環境問題に取り組んでいるが、今後も取り組んでいくべき大きな課題の一つとして、船舶のスクラップに伴う環境問題、いわゆる「シップリサイクル問題」が挙げられる。スクラップされる老朽船は、リサイクルのため解体されるが、その作業が、主にインド、パキスタン、バングラディッシュ、中国等の充分な設備の整っていない施設で行われてきたため、本船に含まれる有害物質の取り扱いが適正に行われないことによる環境汚染や、作業従事者等に対する安全確保が問題となっているものだ。
 これまでに、IMO(国際海事機関)を中心に、UNEP(国連環境計画)や、ILO(国際労働機関)等の国際機関で対策の検討が行われ、現在、今年5月のシップリサイクルに関する規則を定めた国際条約の採択に向けて準備が進められている。
 この条約での対策の趣旨は、特定有害物質の船舶への搭載禁止・使用制限、また制限された有害物質が搭載されている場合は、その一覧表を本船へ備え置くこと。また、解体作業を行うリサイクル施設については、環境への悪影響を防止、最少化し、作業従事者等の安全対策を実施していることにつき所在国政府の承認を受けねばならない、ということだ。
 海運業界の今後の市況回復については、中国の鉄鉱石需要回復を初めとした世界経済の動向に依るところが大きいだろうが、船腹需給調整の手段の一つとしての老齢船のスクラップや、ダブルハル化規制によるシングルハルタンカーのスクラップが増加してくることが予想される。
 船舶は非常に多くのリサイクル可能な資源を使用しているため、貴重な資源として有効利用されなければならない。この条約が発効し、新しいシップリサイクルの形態が定着するには、解決すべき課題は種々あるが、世界の海運国日本の船主として、将来に有効な、より良いシップリサイクルシステムの構築、円滑な運営のために、今後とも当協会と共に積極的に対応していきたい。

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