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オピニオン

2009年6月

海賊問題の視点

日本船主協会 理事長
中本 光夫

 海上自衛艦2隻の呉基地からの出航を見送りながら、本当に有難うと思った。
 3月末からはアデン湾を通航するわが国の船舶の警護も開始され、自国の艦船に守られる乗組員の安心感は如何ばかりであろうか。自衛艦の出動以来、その警護活動のもとでの通航が混乱なく続けられている。海賊を恐れて、ケープ廻りに迂回することも少なくなり、また輸送契約を断っていた船もアデン湾航路に戻っていると聞く。海賊新法も成立が見えてきた。ただ、この一連の動きの中で、いくつか看過できない議論もある。
 一つは、そんな危険なところには行くな、近づくな、遠回りしても大したコスト増にはならないとの意見だ。ケープ回りにすれば、距離にして6500キロ、6〜10日余計に輸送日数がかかり、スエズ運河の通航料を除いても、船社のコスト増は明らかだ。また荷主ひいては国民経済に時間的なロスとそれに伴う在庫の積み増しなど多大な経済的な損失をもたらす。アデン湾の年間通航船舶2万隻のうち約2000隻は日本商船隊の船。同湾を通航して行われる日欧間の貿易は、我が国にとってアジア域内を除けば日米間の貿易に次ぐ極めて重要な位置を占める。その要路で、しかもどの国の領海にも属さない公海上で、重武装した身代金目当ての誘拐集団が出没するからといって避けて通ることで良いのか。公海上で自国籍船、自国民、自国の貨物を守ることはそれぞれの国の責任である。
 2つめは、日本商船隊は便宜置籍船と外国人船員でその大半が構成され、日本離れをしているのに今さら守ってもらうのかとの意見。これに対しては、便宜置籍船も含めて我が国商船隊が挙げた収益全部に本社課税として税金がかかっており、2007年だけでも約2000億円の法人税を払っている事実があるが、それよりもなによりも、わが国が貿易立国であり、わが国商船隊はその輸入の65%、輸出の38%の貨物輸送を担い、わが国の国民生活に不可欠の資源エネルギーの輸入や自動車、鉄鋼、電器、石油化学等の産業の発展に専用船の開発等を通じて大きく貢献しているのである。 
 今回の世界的な経済不振の中で、わが国経済が、米国、欧州、中国の経済情勢に如何に影響をうけるか改めて思い知らされているが、貿易立国、海洋立国、海事立国の日本がその強みを発揮できる道を生かし、さらに発展していくにはソマリア沖の海賊問題は避けて通れない問題である。

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