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2009年8月

「環境セミナー」で思う

日本船主協会 副会長
新日本石油タンカー株式会社 代表取締役社長
松山 行宏

 燃費が良く、環境性能にも優れるハイブリッド車の売れ行きが好調である。しかし、その一方で若者の車保有に対する関心が薄れてきているそうだ。
 若者の車離れは、主に取得費用、維持費等のコストの問題、駐車、渋滞また運転そのものを面倒に思うことなどだそうで、少子化問題をこれに加えれば、国内向け自動車販売は、この先苦戦が予想されそうだ。
 庶民の夢といわれた3C*1が、日本の飛躍的な経済成長に伴い当たり前のものとなった現在、きっかけはともあれ、人々の関心が所有する喜びまた消費する喜びから節約する喜び、エコロジーに転換したことは、人の英知のなせる業であろう。
 フードマイレージ*2に関する問題提起が近年盛んに行われているが、これも温室効果ガスに密接に関係する事柄である。
 ニュースでは、大手コンビニエンスチェーンの賞味期限切れ食品の取り扱いを巡って、本社と店舗の確執が報じられた。
 大量の賞味期限切れ食品の廃棄は、実にもったいなく、飢餓に苦しむ多くの国々を思えば、大変遺憾なことであり、国民一人ひとりが、これを認識し自戒する必要があろう。
 資源また食料自給率に乏しいがために広範囲、かつ大量の物資を海外に依存するわが国で、遠く外国から多くの貴重なエネルギーを費やして輸入した物資の多くが浪費され、廃棄に回っている現状に、その輸入に深く携わる海運業界としても、誠に残念なことである。
 そうした意味で、先日開催された当協会主催の「環境セミナー」では、アグネス・チャンさんの実体験に基づいた飢餓と貧困にあえぐ国々の現状報告とフードマイレージ問題にも関連する温室効果ガス削減についての国土交通省ならびに識者の講演が行われ、参加者全員が改めて環境問題の重要性を認識する機会となり、また当協会の真摯な取り組みをアピールするセミナーであったと思う。
 世界規模の温室効果ガス削減を推進する上で、先進国と途上国間の「共通だが差異ある責任」は、双方の着地点の困難性を示すものである。
 われわれ海運業界が、環境問題において解決すべき課題は、これに留まらない。
 SOx、NOx、バラスト水管理、シップリサイクリング等々、数多い課題が山積しており、その解決に向けて、まさに人の英知を結集しなければならない正念場を迎えている。

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