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2010年5月

杉本常任理事

「食」と「情報」

日本船主協会 常任理事
飯野海運株式会社 代表取締役社長
杉本 勝之

海運の資産は一見するとハードの塊であるが、その仕事の内容は、情報を管理する枠組みに関すること、情報の取り扱いに関することなど情報の運用にかかわるソフト面の管理が重要となっている。経営資源の質的な変化によるものである。

ヒト・モノ・カネ。経営資源の代名詞であったこれら三要素に加え、新たな要素として「情報」が加わったという。この動きは、不思議と日本の教育界の三要素、知・徳・体の動きとも似ている。知育・徳育・体育という戦前からあった教育の枠組みに加え、知徳体を支える源として「食育」の重要性がクローズアップされた。食育基本法という法律が導入されたのは、ご存じの方も多いかもしれない。豊かな人間性を育み、生きる力の源としての「食」の在り方が、教育の現場でも着目されている。

注目すべきは、一見関連性のない「食」と経営資源の「情報」が、人の営み、企業活動の営みとしてもっとも重要な栄養素として扱われていることである。

食事と同じように、情報には必要なものや悪いもの、体質にあうもの合わないものがある。取り込むタイミングも重要である。また、全部一旦取り込んでもいいというものでもない。情報を法人組織内で分別処理する仕組み、情報を伝達する神経回路を作る仕組み、断片的な情報をつなげる仕組みは、組織内部ではコーポレートガバナンスの一翼を担っている、ということもできるであろう。単独での情報価値を正しく理解する力、また関係のなさそうな複数の情報をつなげて埋もれた価値を発掘する力が、入社1年目の社員から経営まで、それぞれの立場で要求されている。

企業経営も、片寄った情報とならないようバランスに気を配ると同時に、必要なものだけを摂取し、さらにはエネルギーへの変換効率を上げなければならない。

ここ2年は厳しい冬の時代であったが、今は、薫風新緑の季節。夏が待ちきれない。

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