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2011年1月

宮原耕治

2011年新春を迎えて

社団法人 日本船主協会
会長 宮原 耕治
 

新年おめでとうございます。2011年の年頭に当たり、一言ご挨拶申し上げます。

 

昨年の世界経済は、中国をはじめインド、ブラジルなどの新興国の力強い経済成長に牽引されましたが、欧州域内での金融不安をはじめとして先進国には不安定な要因もあり、全体的には緩やかな回復傾向で推移しました。

 

わが国においても、経済は回復の動きは見せたものの、年央からの円高は、10月下旬から11月上旬にかけて15年6ヶ月ぶりに80円台の円高水準まで進行し、現在でも依然として高止まりしており、わが国産業に深刻な影響を与えております。

 

昨年の海運市況は、特に定期船部門を中心に好転し、各社の2010年度上期の業績は回復傾向にありました。ただし、円高の直接・間接的な影響などもあり、年末にはかげりも見えはじめ、今年市況がどのように推移していくのか、全く予断を許さない状況にあります。

   

海運業界にとって、昨年もいくつかの大きな出来事がありました。

   

その一つが、国土交通省に設置された成長戦略会議において、わが国海運・海事産業の国際競争力強化に向け真摯なご検討をいただいたことです。この会議の下に設置された検討会には、私自身も委員として参画し、各国との税制の差が競争力の差に直結しているということを説明いたしました。他の委員の皆さんにも、国際的な競争条件の均衡化を図ることの重要性を十分認識していただき、最終的に取りまとめられた新成長戦略には、トン数標準税制を諸外国並みに拡充することや、船舶の特別償却制度、買換特例の維持・拡大等が提言されました。

 

これを受けて、国土交通省の2011年度税制改正要望にも、「トン数標準税制の拡充」や「船舶の特別償却制度・特定資産(船舶)の買換特例(圧縮記帳)の拡充」などを盛り込んでいただきました。残念ながら、「トン数標準税制の拡充」につきましては認められませんでしたが、2012年度以降の検討課題としていただいたことは、まさに、足掛かりができたということであり、今年は、昨年以上に関係者の皆さまのご理解を得るよう努力していきたいと思います。

   

二つ目は、船舶の安全運航にかかわるソマリア沖・アデン湾の海賊問題です。わが国をはじめ、20数カ国から派遣された艦船により、商船の護衛活動等が行われていますが、海賊事件は鎮静化するどころか、ソマリア沖では11月に37件の事件が発生するなどますます増加する傾向にあります。また、当協会加盟船社の運航する船舶が海賊にハイジャックされる事件も発生しています。

 

海賊問題は海運業界だけの問題ではありません。アデン湾やインド洋水域は、欧州や中東とわが国を結ぶ重要な航路にあたり、わが国の産業活動や国民生活に大きな影響があります。この海域の船舶の航行安全の確保は、今年も大きな課題になるでしょう。

 

昨年8月には、私どもはわが国海賊対処部隊の拠点が置かれるジブチを訪問いたしました。私は当協会代表団の団長として、50度を越える酷暑の中で日々護衛活動に従事されている自衛隊・海上保安庁の皆さんに直接感謝の気持ちを伝えるために参ったのですが、駐在されている皆さんが、日本商船隊の安全を確保し、わが国の経済や国民生活を支えていくという強い使命感を持ち任務に当たられていることを肌で感じ、逆に強く勇気付けられました。現地の関係の皆様はじめ、防衛省、国土交通省や関係省庁の皆さまのご尽力にあらためて深く感謝申し上げます。

 

船舶の航行安全の確保と並び、海運にとって重要な環境保全、特に国際海運からの温室効果ガス(GHG)削減対策については、昨年、IMOの場で技術的な規制の枠組みが決まりました。燃料油課金制度や排出量取引制度などの経済的手法については、まだ検討の途上にありますが、国際海運の特殊性を踏まえた効果的かつ実効性のある削減対策の実現に向けて、今年も引き続き取り組んで参ります。

 

この他にも、国内物資の安定輸送を維持するために欠くことのできない内航海運への支援を引き続き関係方面に要請していきたいと思います。

 

また、日本人海技者(船員)の確保・育成、外国人船員の承認制度に関わる問題、水先問題など、昨年に引き続き課題は数多くありますが、問題の解決に全力を尽くしていきたいと思います。

 

本年も皆さまからのご指導、お力添えを賜りますようお願い申し上げます。

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