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2011年2月

萬治隆生

水先制度改革について

日本船主協会副会長
(国際船員労務協会 会長)
萬治 隆生
 

平成19年4月1日から新水先法が施行され其れに伴って、水先料金は全国一律に定める省令料金から上限認可届出制に変わりました。

水先料金に係わる自動認可額の公示(激変緩和措置等のため期限2年間)に当たり、平成20年2月15日に国土交通省より出された通達には、この届出制はサービスを享受するユーザーの意向を踏まえ、柔軟かつ迅速な料金設定を自由に行えるようにすると共に、水先人会はユーザーの要望に答え、指名制や3大湾の水先区統合による通し業務の導入により、水先業務の一層の効率化と共に、ユーザーの意向を反映した多様な料金や、各種営業割引の設定等による水先料金の効率化が期待されると謳っています。

同年4月よりこの通達に基づいて新料金制度がスタートしましたが、指名制、料金の多様化、業務の効率化といった事は起こらず、期待に反する結果となりました。そこで平成21年6月国土交通省主導の下、通達の内容を実効あるものにする為に、日本水先人会連合会の提案により、4万トン以上を対象にしたグループ指名制の導入と、輪番制の両立及び、グループ指名対象船に対する、水先料金の一部値引きをテーマにして、東京湾、伊勢三河湾、大阪湾そして内海の4大水先区を対象として、トライアルを実施することとなりました。

平成21年7月から開始されたトライアル事業は、4大水先区それぞれに温度差があるものの、徐々に定着しつつある中、平成22年12月にそのレビューを行いました。日本船主協会はレビューに当たり、事業を通じて、多様な水先料金の交渉や、業務の効率化が図られ、其れが水先料金へ反映され、かつ一層促進される様、引き続き求めて行くことを主張しています。

トライアル事業を通し、3大水先区における、通し業務件数の拡大及び、ベイとハーバーの各水先人会から名実共に新水先人会への統合への流れが定着しつつある事は、業務の効率化と人材の有効活用の面でのトライアルの効果と言えると思いますが、この流れを引き出した、各水先区のリーダーの人たちには敬意を表したいと思います。

トライアル事業の実施に伴い、1年延期された、新上限認可料金は、本年2月には公示されますが、その決定のプロセス、内容には注意が必要であると考えています。

日本人船員が急激に減少し、少子高齢化が進む現状下、水先人後継者育成問題は重要なテーマです。

新水先法において、人材ソースの多様化を図る為に、資格要件を緩和し、1級から船長経験を必要としない3級までの等級別免許制度が導入されました。

同時に水先養成を支援する為に、海技振興センターが設立されると共に、東京海洋大学、神戸大学そして海技大学校の3か所の水先人養成施設が登録されました。

平成20年10月から、3か所の養成施設で3級の水先人養成課程が開始され、その第一期生が2年6ヶ月の養成課程を修了し、この4月以降には各水先区に配属され、就業することになっています。

乗船経験の少ないこの人たちを名実共に1人前の水先人として育成する為には、時間と経験の場の提供が必要となりますが、ユーザーである日本船主協会は理解と協力が必要となります。

それに関連して、3級水先人の水先料金をどの様に位置付けるのか、1級水先人と同額の水先料となるのか、あるいは経験の差を斟酌して別料金とするのか、訓練の場の提供と実務をどのように関連させるのか早急に結論を出す必要があります。

業界の人材の確保育成は、其の業界自らが責任を持って行う事が、一般的な考え方であるといえます。

現行の3養成施設における養成に対する対応や考え方には疑問の声が上がっているところです。船乗りとしての経験の無い若者を2.5年という短期間で水先人として育成する為には、効率的で実践的な、短期集中訓練が必要となりますが、其れが出来るのは、実務を熟知している水先人会しかないと思われます。海技振興センターと水先人会がどのように関与していけば、効果的な養成体制が確立出来るか、そこでユーザーはどんな協力出来るか、関係者での論議が必要です。

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