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2011年3月

黒谷研一

新しい革袋には新しい酒を

日本船主協会常任理事 (川崎汽船 代表取締役社長)
黒谷 研一
 

外航海運を中心とする海運事業が環境に与える負荷に対しては、国際社会の一員として環境保全対策の推進にいっそう貢献していかなければならない。温室効果ガス(GHG)対策はもとより、昨年7月に発効した海洋汚染防止条約(MARPOL)条約改正附属書Ⅵにより地域的規制も強化されたNOx(窒素酸化物)SOx(硫黄酸化物)への適合も重要課題である。そして、日本の造船所、研究所においても燃料効率を高めるエコシップをはじめとする環境技術が次々に開発されており、当社をふくむ日本船主協会会員にあってはこれに連携して取り組み、さらに運航技術・技量を加えて名実ともにわが国が世界をリードできる海運国になることが求められている。

私ごとになってしまうが、当社グループは、環境マネジメントシステムISO 14001の認証を2002年に取得しており、去る2月26日には3回目の日本海事協会(Class NK)による更新・臨時審査を経て今回も無事登録証書が発行された。本年から、適用範囲をグループ会社であるケイラインジャパンの各支店及び太洋日本汽船の東京支店に拡大した。

当社の場合、冒頭に述べた船舶によるものとして、年間約4百万トンの燃料を消費し、CO2 約12百万トン、NOx 約0.3百万トン、SOx 0.2百万トンを排出しているが、これらを削減すべく日夜努力している。一方、船舶に比べれば総量では小規模ではあるが、オフィスにおける活動に起因する環境に与える負荷も当然存在する。環境マネジメントシステムにおける環境側面(環境に影響を与える原因となる要素)は、組織の活動をもれなく考慮しなければならない。つまり、オフィスでの環境保全活動にも、天然資源の消費節減や廃棄物の低減を通じた地道な取り組みが求められるという重要な位置づけが与えられている。

当社は、現在オフィスが多層階に分かれている問題点を解決し、そこで働く役職員が直接対面してコミュニケーションを深めることを主眼に飯野ビルへの移転を決定したところであるが、移転決定にあたってはその環境性能の高さにも着目した。

当社拠点の移転先である飯野ビルは、自然換気システムをはじめ自然エネルギーを利用可能とした「環境を配慮した省エネルギービル」である。従業員一人ひとりが環境目標を強く認識し、仕事の進め方を工夫し自ら行動していくことが前提であるが、排水の適正管理、電力使用量の削減、水道水使用量などの当社の環境目標達成を後押ししてくれることを期待している。

革新的かつ環境にもやさしい輸送モード創造のためにも、私にやらせてもらえば成功しますよ!というような勢いのある社員が、40年前に自動車運搬専用船をつくりだしたときのように集い、議論をたたかわすに相応しい場にしていきたい。

聖書に起源をもつ「新しい酒は新しい革袋に盛れ」という言葉がある。力強い進言が今の当社には必要である。つまり、新しい酒である。新しい革袋たる拠点において、海外拠点に散らばる社員のコミュニケーションも組み合わせた未来に向けた議論を積み重ね、発展をとげたいと思う。

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