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2013年1月

芦田 昭充

2013年を迎えるにあたって

一般社団法人 日本船主協会
会長  芦田 昭充

あけましておめでとうございます。年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

2013年は巳の年、いわゆる蛇年です。蛇は脱皮を繰り返して新しい身体に生まれ変わることから、古来、「再生」の象徴とされています。一昨年、昨年と、我が国海運業界は厳しい局面を迎えましたが、私は「展望」を「十(テン)望」と言い換え、10項目の、経営環境の改善や業界の前向きな取り組み等についてお話ししてきました。今なお厳しい状況も残りますが、今年は是非、「十望」をかなえ、海運「再生」の年にしたいと思います。

 

実際、「十望」はいずれも、程度の差こそあれ実現の方向に向かっています。

昨年、概ね1ドル70円台で推移していた為替レートが11月中頃から80円台を回復したのは、日本の貿易収支の赤字拡大といった構造変化を反映したものでしょう。700ドルを超えていた燃料油価格も600ドル台に下がり、500ドル台を窺う水準にあります。船腹供給の過剰についても、市場メカニズムを通じて需給バランスの調整が働き始めています。

海上荷動について言えば、中国の資源・エネルギー輸入が、経済減速を言われる昨今においても引き続き旺盛な伸びを示しています。自動車の海上荷動きは着実に回復し、LNG・LPG輸送も好調です。コンテナ船においては、損益が大幅に悪化するなか、各社が独自にパフォーマンス指標を開示するなどしながら持続可能な運賃水準の回復に努める方向に転じたことは、特筆すべき動きでした。安全運航や環境保全にも資する解撤や減速航海に向けた努力、一方での海洋開発事業といったフロンティアへの進出とあわせ、外航海運各社が、W.チャン・キム氏(INSEAD教授)らが言うところの、血みどろの競合を繰り広げる「赤い海」から斬新なアイディアや差別化を進めた新たな市場である「青い海」へと舳先を巡らす、革新的・創造的な動きだと見ることもできるでしょう。

 

以上に加え、「十望」の10番目に掲げたのが、当協会の活動により関係の深い、「決められる政治」への期待でした。

この点に関して言えば、昨年9月、トン数標準税制の拡充に向けて、その前提となる海上運送法の改正が成立しました。我が国にとっての安定的な海上輸送の重要性につき多数の超党派の国会議員のご理解を得、通常国会終盤の慌ただしい日程をぬって同法の可決・成立を見たことは誠に心強く、有難いことでした。国土交通省のご尽力、経団連・造船業界等からのご支援も感謝に堪えません。当協会は、いよいよこの4月を見込む拡充トン数標準税制の適用開始、そして船舶特別償却制度等の海運税制の存続に向け、関係各位のご理解を得ながら、引き続き取り組んでまいります。

ソマリア沖・アデン湾の海賊問題に関しては、脅威は依然として極めて高く、西アフリカ等への伝播の動きも見られます。昨年も海賊対処法が延長され、我が国自衛隊による断固たる護衛・哨戒活動が継続しています。また、当協会が強く要望してきた武装ガードの日本籍船への乗船警備を可能とする措置についても、国会並びに関係省庁のご理解・ご尽力のもと、次期通常国会に法案を提出するための準備が整いつつあります。

昨年6月、イラン情勢が緊迫化する中で緊急上程されたイラン積み原油輸送に係る賠償義務履行担保に関する特別措置法の成立とあわせ、意を尽くしてご説明すれば、政府・国会においても果断にご決断いただけるという思いを、私たちは強くしています。今年も、国際的な競争環境のもとで日本海運が置かれた状況、それに基づく要望、そして四面環海の我が国において海運が果たしている大きな役割などについて、関係者の皆様に更にご理解を深めていただくべく、渉外・広報活動の強化に努めてまいりたいと存じます。

 

当協会の取り組むべき課題としては、このほかにも温室効果ガス(GHG)排出削減などの環境問題への対応、水先制度の更なるレビュー、パナマ・スエズ両運河通航料値上げをはじめとする国内外のコスト増加・規制問題への対応、日本人海技者の確保・育成、IFRS(国際会計基準)への対応、内航海運におけるカボタージュ制度の堅持や船舶老朽化・船員高齢化問題への対応など、枚挙に暇がありません。

温室効果ガス問題については、IMO(国際海事機関)で決定された新造船への燃費規制と本船上でのエネルギー効率管理が、いよいよこの1月から開始されます。海運業界としてはしっかりとこれに取り組むとともに、いわゆる経済的手法については、同じくIMOにおける議論を通じて、国籍を問わず一律に適用され公平性が保たれるとともに、実態から遊離した総量規制の導入によって国際物流が阻害されないよう、働きかけを強化していきます。

水先制度については、上限認可料金の引き下げが昨年実施されましたが、引き続き水先人養成問題の解決をはじめとするレビューが必要です。

パナマ運河では、主要な船種の通航料がここ10年間で50〜180%も上昇しています。今年10月にも再値上げが予定されおり、政府並びに国際海運団体・各国船主協会とも連携し、値上げの撤回や海運業界との建設的な協議を求めていきます。

 

当協会はこれら山積する課題に取り組みつつ、我が国海運業の再生と発展に尽くしてまいる所存です。本年も皆様のご指導、お力添えを賜りますよう、お願い申し上げます。

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