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オピニオン

2014年2月1日

工藤

いよいよ技術力の勝負に

日本船主協会 副会長
日本郵船 代表取締役社長 工藤 泰三

国内造船業界、舶用工業会の皆様に於かれては、昨年、やっと、それまでの超円高の状態が是正され、一息つかれた方も多かったのではないかと存じます。もちろん、中国や韓国の同業他社との熾烈な競争は今後とも、避けられないのでしょうが、少なくとも、自らの努力では如何ともし難い足枷が外れ、本来あるべき、技術力勝負の世界に復帰しつつある訳で、皆様の待ち望んだ状況になったと言えるのではないでしょうか。

 業界紙によると、昨年の受注隻数は全世界で2,000隻超、約9,000万総トンと大幅な伸びを示し、中でも、我が国造船業界は前年比、70%強と、増加幅が著しく、これは、建造品質も然ることながら、特に省エネ性能といった技術プレミアムが明確に世界の船主から支持された事の表れと受け取れます。

 燃料代が高止まりした今、省エネ船の保有の多寡が、各船会社の競争力を左右すると言って過言ではない状況となっていますので、当然の成り行きとも言えるでしょう。

 ところで、省エネが、如何に急速に進んでいるのか? 皆さんは振り返って見た事がありますか? 因みに、日本郵船のパナマックス型コンテナ船で比較しますと、1970年代後半と2000年代前半の建造船とでは、主機や船型改善等による純粋な燃費改善並びに構造解析技術進化による積個数増加の効果により、30年間で、コンテナ1TEU当たりの燃料消費量は4分の1にまで、大幅に改善されました。現在は更なる省エネ化に加え、1万TEUを大幅に上回る超大型化、効率運航が進み、40年前と比べ1TEU当たり換算ではありますが、10分の1以下までの削減が、可能となって来ています。陸上の大型トラックや他の輸送手段とは、比較にならないスピードで省エネが進んでいる訳です。

 さて、この高い技術力をもった国内造船業界に期待しているのは、もちろん、省エネ分野に留まりません。ご存じの通り、邦船各社は、最近、オフショア・海洋事業に力を入れ始めました。コモディティー化した船種だけでは、今後、愈々、激しい競争に晒されるだけであり、我々、邦船各社が生き残って行くには、極めて高い操船技術や安全基準を求められる参入障壁が高い分野にチャレンジして行くしかないからです。国内造船業界の皆様にも、是非、この分野でも、果敢にチャレンジして頂き、我々と共に、更なる成長と発展を目指して頂ければ、これ程、心強い事はありません。日本の海運界は国内の造船業界と二人三脚で成長してきた訳ですから。

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