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オピニオン

2014年11月1日

小林副会長

日本人船員の確保

日本船主協会 副会長
JXオーシャン 代表取締役社長
小林 道康

四方を海に囲まれた我が国は、貿易輸入量の99.7%、国内貨物輸送量の約40%を海運が担っており、海運は国家経済、国民生活を支えるうえで大変重要なライフラインとしての役割を果たしている。日本商船隊における外航日本人船員は、プラザ合意後の急速な円高等によるコスト競争力の喪失から、外国人船員への転換が進み、この30年で約5万7千人から約2,600人と、20分の1以下に大幅減少した。また、内航船員も同様に約7万5千人から3万人へと半減している。加えて船員の高齢化も著しく進み、年齢構成でみると50歳以上55歳未満の年齢層が一番多い状況にあり、後継者不足が顕在化するなど憂慮すべき事態となっている。

このような環境下、海洋に多くを依存している我が国における海運の安定性・安全性・信頼性の確保、海技の世代間の伝承等を継続するためには、日本人船員を安定的かつ計画的に確保し、育成していくことがことさら重要となる。

船員の確保・育成を進めるためには、船員の職業的魅力・重要性が広く理解されることが必要である。海運の重要性に対する社会的認知度も高いとは言えず、船員を志望する人材を集めることの難しさに直面している。また、海技を習得するために多くの労苦、また船員の職場環境・労働環境の厳しさなどから、次世代の日本海運界を担う若者が積極的に、そして安心して船員という職業を選択できるような環境が十分形成されていない状況がある。

諸外国では、国家安全保障上の理由や自国生活物資の安定輸送手段の確保、船舶運航等に係るノウハウの維持、海運及び海事関連産業の重要性の観点から、自国船員(海技者)の意義・必要性を認め、その確保のための施策が行われている。

日本においても、このような四囲の状況に変わることはなく、優秀な船員をはじめとする海事分野の人材育成が必要不可欠である。国土交通省海事局では「日本船舶および船員の確保に関する基本方針」を打ち出し、平成20年度からの5年間で外航日本船舶の隻数を2倍に、外航日本人船員については、平成20年度から10年間で1.5倍にするという目標のもと、トン数標準税制を実施しているところである。

しかしながら、人材確保のための環境整備は、海運各社の自主的な取り組みだけでは限界があり、国家的な課題として、国、業界団体、各種海事関係団体、船員教育訓練機関等が連携し、より踏み込んだ取り組みが求められる。

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