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オピニオン

2015年1月1日

朝倉会長

年頭挨拶

一般社団法人 日本船主協会
会長 朝倉 次郎

新年明けましておめでとうございます。2015年の年頭にあたり一言ご挨拶を申し上げます。

昨年は、政府・日銀の2%の「物価安定の目標」を達成するため、「量的・質的金融緩和」が堅持され、行き過ぎた円高の是正傾向が継続しました。これにより超円高で苦境を強いられた多くの海運企業では燃料油価格の大幅な下落にも助けられ業績が回復いたしました。本年は海運界にとって、業績回復基調が定着し、さらなる成長を目指せる年になるのではないかと、大いに期待しています。
 また、5月には、8年ぶりに日本でアジア船主フォーラム(ASF)総会を開催しました。総勢約200名が大津に集い、海賊問題や環境問題などの主要な課題についてメンバー間で理解を深めることができ、成功裡に終えることができました。共通課題である温暖化問題やバラスト水問題などの環境問題、スエズ・パナマ運河通航料問題などでは、アジア諸国が一丸となって声を上げていくことが、非常に重要だと実感いたしましたので、今後ともさらに連携を深めていきたいと考えております。

  さて、本年もしっかり取り組まなければならない重要課題が山積しております。
 昨年は、「船舶の特別償却制度」および「固定資産税の課税の特例」の延長につきましては大変厳しい状況のなか、全力で取り組みました。ペンを執る現時点、結果の報に接するには至っておりませんが、ご尽力いただいた関係各方面の皆様には大変感謝申し上げます。またこれに同時併行し、昨年からわが国のトン数標準税制など海運税制の将来のあり方を中心に、イコールフッティングや経済安全保障の観点に加え、海洋をめぐる環境変化も踏まえながら、新たな外航海運政策のあるべき姿についての議論を開始しました。昨夏、中間取り纏めを行ったところです。本年はさらに諸外国における外航海運政策の調査や関係方面からの意見聞き取り等を通じ、6月の最終取り纏めに向け、取り組んで参ります。
 一方、船協会長に就任して以来、まず第一に注力していますのは航行安全の確保です。依然として海賊事件は大きな懸念となっています。ソマリア沖・アデン湾では、わが国海上自衛隊・海上保安庁を含む各国の懸命な海賊対処活動や民間武装警備員の乗船等の各船の自衛措置により、2011年をピークに海賊発生件数は大幅に減少しました。しかしながら、その脅威自体が無くなった訳ではありません。さらに、西アフリカ、東南アジアでも凶暴な海賊事案が増え続けています。今後も乗組員、船舶および貨物の安全を確保するため、これまで以上に政府や国際海運会議所(ICS)等とも連携を図りながら対応して参る所存です。

 これら以外にも課題は沢山ありますが、その中でも今最も取り組まねばならない課題は、人材確保です。国内全産業が少子化により同様の問題を抱えているのですが、特に海事産業においては業界の知名度が低いのか、最近の若者の志向の変化によるものか深刻な状況です。内航海運においては、船員の高齢化が顕著で、今後は船員不足になり、飽和状態の陸送からのモーダルシフトの重責を担っていくことが難しくなると思われます。また、外航海運においても、経験豊富で優秀な日本人海技者が不足して来ており、海技者を志向する者も減少傾向で、優秀な技術を未来に伝承していくことが難しくなっております。さらに、外航船の入出港に必要不可欠な水先人も経験豊富な海技者の減少により、深刻な後継者不足が続いていることより、近い将来、船の入出港が滞り、わが国の経済に深刻な影響を与えかねないのではないかと憂慮しております。
このような状況に鑑み、海事関係者それぞれが、人材確保に注力していますが 海事産業の認知度を上げる必要を切実に感じております。
 社会科の先生方に、エネルギー資源をはじめとして貿易物資の99.7%が船で運ばれていると説明すると非常に驚かれます。これが海運の認知度の現状を如実に表しているのではないでしょうか
 海事産業をより一層知っていただくためには、これまで個々の団体が行っていたPR活動を再編成する等して国民の皆様により強く訴えていくことが何より必要です。特に本年は「海の日」の祝日化が制定され20周年を迎える節目の年であるばかりか、国連が定める「世界海の日」の国際イベントがわが国で初めて行われる年でもあります。

 今年の干支「未」は由来によれば、群れをなす羊は家族の安泰を示す意味があるそうです。「海事クラスター」という家族が一丸となって、海事産業の役割や重要性に関する国民の皆様の理解度を引き上げる運動を力強く展開できればと期待しております。
 本年も良き年となるよう心より祈念申し上げまして、私の新年のご挨拶とさせていただきます。

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