JSA 一般社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Homeオピニオン >2016年10月

オピニオン

2016年10月1日

佐々木副会長

外航船員を増やす取り組み

日本船主協会 副会長
国際船員労務協会 会長
佐々木 真己

8月22日、リオデジャネイロオリンピックが閉幕した。日本選手団の連日の活躍で、この時期に特に何処かに出掛ける予定もなく夏休みを取った無精者にとって、退屈しない時間を過ごすことができたことは大変ありがたかった。予想を上回る活躍は、選手1人1人の血の滲むような努力は勿論であるが、昨年10月に発足したスポーツ庁が掲げる政策目標の1つである国際競技力向上という旗印の下、日本オリンピック委員会の強化スタッフ、及び各競技団体の監督とコーチによる指導、日本スポーツ振興センターによる現地でのサポート体制の整備、協賛企業の協力等々、国を挙げての支援の成果であることは言を俟たない。
 海運界では今、外航船員を目指す若者を増やすことと外航船員への就職支援に関して、労使一体となって取り組んでいる。
 「1974年約57,000人、2015年約2,300人」、これは海運関連の統計で良く目にする外航日本人船員の減少を示す数値である。2009年をボトムにして僅かな増加傾向も見られるがほぼ横ばいとなっている。
 この数値は休暇中の船員も含んでいるが、国際船員労務協会に加盟している会員会社が配乗している船舶に実際に乗り組んでいる日本人船員の総数を見ると(4月1日現在、カッコ内は全乗組員に対する比率%)、2004年821人(2.99)、2005年763人(2.57)、2006年711人(2.14)、2007年655人(1.78)、2008年620人(1.56)、2009年559人(1.33)、2010年571人(1.36)、2011年544人(1.22)、2012年507人(1.06)、2013年461人(0.94)、2014年436人(0.90)、2015年474人(0.99)、2016年455人(0.97)となっている。この数値は運航されている船舶の数に影響されるものであり、また日本人船員がほぼ職員だけなのに対し外国人船員は部員も含んでいることもあり単純に比較することはできないが、日本の外航商船隊に乗り組む日本人船員の比率は年々小さくなっており、今現在運航中の日本の外航商船隊に乗り組む日本人船員は全乗組員の1%に満たないのが現実である。
 このような状況の中、全日本海員組合と国際船員労務協会は1人でも多くの人に外航船員への道に進んでもらえるように、船と船員に関する情報を幼稚園児から小学生も含めた若い人達に伝える活動として「J-CREW PROJECT やっぱり海が好き」を展開している。また、日本船主協会は広報活動として停泊中の船内見学等を企画し、青少年を対象に海運や船員の仕事の理解増進に力を入れている。そして、日本船員雇用センターが中心となり外航日本人船員を増やそうと取り組んでいるのが合同面談会であり、外航日本人船員(海技者)を育成、採用する意欲のある企業と船員希望者との就職マッチングの機会を提供している。
 これらの活動だけで外航日本人船員の急激な増加は叶わないとは思うが、日本の海運業に日本人船員(海技者)は欠くことのできない存在であることは衆目の認めるところである。近い将来外航海運に活況が戻り、運航船舶の増加と共に船員の需要が増した時に備えて、若い人達に海運への理解を高めること、そして外航船員を目指す若者を増やすための活動を地道に続けることが重要である。

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保