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オピニオン

2016年12月1日

池田副会長

海運業界をとりまく環境規制

〜MEPC70の結果を踏まえて〜

日本船主協会 副会長
商船三井 代表取締役社長
池田 潤一郎

10月24日から28日にロンドンで国際海事機関(IMO)の第70回海洋環境保護委員会(MEPC70)が開催されました。今会合は、バラスト水処理装置の搭載期限や、燃料油の硫黄分0.5%規制強化の開始時期など、船社に影響の大きい決定がなされる場として注目されました。
 IMOのバラスト水管理条約が、2017年9月8日に発効することとなった状況下、今MEPC70では、バラスト水処理装置搭載期限の延長を求める提案がリベリア国や海運業界団体から提出され、会合では賛成と反対が拮抗し、結論は次会合に持越しになったと聞きました。一方、米国ではIMOに先行するバラスト水規制が2016年に発効しておりますが、米国基準の適合承認を受けたバラスト水処理装置は未だ存在せず、搭載期限が迫る中で、船主にとっては対応が非常に困難な状況となっております。各社方針は異なると思いますが、期限直前に搭載需要が激増し、機器製造、ヤードキャパシティー、マンパワーの不足により機器搭載期限が遵守できなくなるリスクを勘案し、商船三井は十分な性能が確認できた機種を独自に選定し、バラスト水処理装置の先行搭載を進めています。
 今回注目されたもう一つのアジェンダは、燃料油の硫黄分含有率0.5%への規制強化の開始時期について、適合油の供給量の調査結果を基に、規制開始時期(2020年または2025年)が決定されることでした。IMOの事前調査では、2020年には適合油の供給は可能であるとの結論であった一方、石油業界団体(IPIECA)は2020年に適合油を供給することは「極めて困難」との独自の調査結果を提出しており、加盟各国がいかに判断するかが注目されておりました。
 結果として、2020年開始を主張する国が欧州諸国をはじめ多数を占め、2020年の規制開始が決定されたことは報道の通りですが、規制適合油の品質面・安全面での問題を指摘する国が相当数あり、今後、小委員会で2020年規制開始を踏まえ、諸問題の解決に向けた検討が行われていくとのことです。この規制に対応するには、適合油の供給を受ける他、LNGなど代替燃料の使用、脱硫スクラバーの搭載といった選択肢があります。最善の選択をすべく検討を進めて参りますが、既存船を含め、代替燃料使用やスクラバー搭載にて全船対応することは現実的ではなく、安定的な輸送を継続するためには、適合油が確実に供給されることが不可欠です。2020年開始が決定した以上、適合油の適正供給に向けて、油社の方々にはご尽力いただきたいと切に願っております。
 環境規制強化による海運を取り巻く状況は劇的に変化していますが、地球温暖化対策をはじめ、環境規制強化は海運業界ばかりでなく、あらゆる産業界が直面し取り組むべき社会的課題です。海運会社には地球規模の課題解決に向けて、お客様とも連携し対応していく真のパートナーであることが求められていると考えます。50年後、100年後を見据え、地球環境の問題に積極的に取り組んでいく、特に若い人たちにはそのような視点で海運の将来を真摯に考えてほしいと思っています。

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