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オピニオン

2017年3月1日

小畠 徹常任委員

知・好・楽 CSV

日本船主協会 常任委員
NSユナイテッド海運 代表取締役社長
小畠 徹

論語に「これを知る者は、これを好む者に如かず。これを好む者は、これを楽しむ者に如かず。」とあります。論語は何について語っているのか判らない部分が多いのですが、一般的な解釈としては倫理・道徳を行う姿勢について「知<好<楽」と述べているとされています。
 最近はこの「知・好・楽」をより広く解釈して、「仕事を義務感でやるのでなく、好んで、楽しんでやるのが良いのだ。」と積極的な人生観として語られることが多いようです。
 なでしこジャパンの佐々木前監督も「なでしこジャパンの選手はサッカーを心から楽しんでいる。それがフェアプレーにつながり、好成績にもつながる。」と述べています。「対戦相手は『敵』ではない。練習の成果を試してくれる『相手』である。」とも語っています。そう思って、なでしこジャパンの試合を観ると、確かにあるすがすがしさを感じられます。10年ぐらい前の話ですが、中国での試合で観客席からのブーイングにもスマートに対応して、最後には観客から大きな拍手・称賛を得ていました。もちろん、彼女たちも勝ち負けにこだわるのですが、それだけではない何かがあると感じられるのです。

 少し視点は異なりますが、仕事・業務への取り組み姿勢について、CSV(Creating Shared Value=共有価値創造)というアプローチもあります。数年前にマイケル・ポーターという米国の経済学者が提唱したとのことですが、社会的な課題の解決と自分の仕事を結び付けようというものです。CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)はもちろん重要な視点ですが、何か義務感をともなう硬い感じがする面は否めません。CSVには、よりポジティブに明るく、自分の仕事・会社の仕事を捉えようと言うニュアンスが強くあります。また、CSVと似たような表現に「三方良し」というのもあります。「売り手良し、買い手良し、世間良し。」という近江商人の教えだそうですが、昔の日本にも現代に通じる考えをもった人が居たのだなと感心させられます。

 CSVと言う観点で海運業を捉えると「皆の生活に不可欠な食糧・エネルギー・原材料を輸入する一方、輸出品を安定的に輸送している。」「優れた船舶、操船によって地球環境に優しい。」「フィリピンをはじめ世界各地で雇用機会を提供している。」等などの「価値の共有・創造」ができると考えています。こういった内容は、毎年毎年の日本船主協会の報告、宣言などでも謳われているのですが、単なるプロパガンダではなく、各社の従業員ひとりひとりのレベルまで自覚、浸透していければ良いなと考えています。また若い世代の方々にぜひ海運業あるいは海事クラスターのCSVをご理解願いたいとも思っています。働いている個々人が自問して、自分にとってのCSVを再発見できれば大変素晴らしいことです。
 船員の高齢化・人手不足も内航海運を中心にいよいよ顕在化してきました。トラックから船舶へのモーダルシフトの必要性も強調されています。「(自分の仕事は)社会を豊かにする仕事なのだ。社会的価値を創造する仕事なのだ。」と皆が自信を深め、かつ「仕事を楽しむ。」ようになって欲しいものです。もちろん企業としては必要なPRや職場環境整備に努めなければなりませんが。

以上

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