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オピニオン

2021年1月1日

内藤会長

2021年新春を迎えて

日本船主協会 会長
内藤 忠顕

新年あけましておめでとうございます。

2021年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。

はじめに、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔み申し上げますとともに、罹患された方々には心よりお見舞い申し上げます。また、今も感染拡大の防止や治療にご尽力されている医療関係者をはじめとした多くの皆さまに心より感謝申し上げます。一日も早くこの事態が収束し、平穏な日常が戻ってくるよう切に願っております。

昨年は、新型コロナウイルス感染症により、多くの国で渡航規制や外出制限が実施されるなど、世の中の様相が一変した年になりました。世界は、人・モノの動きや経済活動の減退により、歴史的な低迷に陥り、様々な業界に大きな影響を与えました。

海運業界においても例外ではなく、これまでにない問題が発生しました。とりわけ深刻化したのが、船員交代問題です。各国が人の移動に対する厳しい規制を掛けたことにより、船員の交代が滞り、就業契約期間を延長して乗船をせざるを得ない事態が世界中で発生しました。これは船舶の安全運航上の観点からも極めて憂慮すべき問題でした。現在では交代に関する状況は改善したものの、未だ移動の規制があるなかで、滞留している船員の交代を進める必要があります。多くの船員は物流を止めないという使命感を持って、乗船を続けており、船員は社会を支える「エッセンシャルワーカー」であることをご理解いただき、応援していただければと思います。

こうしたなか、日本船主協会は、コロナ禍を乗り越えて、日本の海運がさらなる前進と発展をしていけるよう、山積する重要課題に積極的に取り組んでまいります。

海運業界にとって取り組むべき重要な課題の一つ、地球温暖化対策については、IMOは国際海運からのGHG総排出量を2050年までに2008年比で50%削減する目標を掲げており、新造船に続き、既存船への国際ルールも出来上がろうとしています。また、重油からLNGへの燃料の切り替えや、アンモニアや水素といった次世代燃料の実用化に向けた取り組みなど、脱炭素化の流れは加速していくものと考えます。海運業界としては、世界と社会の動向を見極め、こうした課題に真摯に向き合うことで、環境分野における先進的な取り組みを産業の力としていくとともに、社会の持続的な発展にも貢献していきたいと考えています。

次に厳しい国際競争にさらされている外航海運企業にとって、他国の企業と同条件で競争できる経営環境の整備は、極めて重要です。昨年は令和3年度税制改正において「外航船舶の特別償却制度の延長」、「国際船舶に係る固定資産税の特例措置の拡充・延長」が認められました。新型コロナウイルスで大変な状況のなかでの国会議員の先生方、国土交通省および関係者の皆さまのご尽力に改めて御礼申し上げます。他方、昨年から、交通政策審議会・海事分科会「国際海上輸送部会」において、わが国海運の基盤整備策等が検討されておりますが、現行のトン数標準税制の期限(2023年3月末)を念頭に、わが国外航海運の競争力強化に資する税制として、今後も維持できるようしっかりと議論を進めていく必要があります。

ソマリア沖・アデン湾における海賊事案については、状況がかなり改善されてきております。特に日本においては、海賊対処法の下、自衛隊や海上保安庁の皆さまにご尽力いただいていることから、例年、当協会と関係団体より編成された訪問団をジブチに派遣しておりますが、コロナ禍の下、残念ながら昨年は派遣することができませんでした。このため、当協会としては統合幕僚長、海上幕僚長、海上保安庁長官を訪問させていただき、現地でご苦労いただいている皆さま及び関係者の皆さまに、改めて感謝申し上げたところです。

海運業の認知度向上につきましては、昨年より、小学5年生の社会科の教科書において、海運が取り上げられ、それを活用した授業が始まりました。また本年からは、中学校の教科書においても、海運が取り上げられることとなっております。今後ますます海運業について認知が広がり、理解が深まることを期待するとともに、当協会としても認知度向上に向けた取り組みをさらに進めてまいります。

本年の干支の「丑」には「苦労に耐える」という意味があると言われています。7月には、延期になりました東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されておりますが、新型コロナウイルス感染症の脅威を克服し、無事の開催を願っております。海運業界としても、この感染症に屈することなく、わが国を支えるインフラとして、日本経済や社会の更なる発展に寄与できるよう努めてまいります。最後に、皆さまにとって、この苦労の先に、素晴らしい未来が訪れますことを心より祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

以上

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