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オピニオン

2023年10月1日

須田常任委員

「人とのつながりが海運の未来を拓く」

日本船主協会 常任委員
NYKバルク・プロジェクト 代表取締役社長
須田 雅志

本年6月30日付で常任委員に就任したNYKバルク・プロジェクトの須田雅志です。

海運ビルに足を運ぶのは久しぶりのことですが、自身が不定期船の営業担当だったころ、1994年から98年にかけてのころの話ですが、毎月足を運ぶ機会がありました。当時は日本船主協会(以下、船協)の事務所に、輸入貨物輸送協議会という組織が同居しており、麦、コメ、木材等の分科会があり、各社の代表が集まって、輸送にかかわる問題などについて意見交換をしていましたが、そこは同時に各社の担当を知れる場でもありました。普段は競争相手でもありますが、他社の先輩から日本海運のいろんな歴史を教えてもらい、後継の海運人を育てる気概で接して頂いたことは、今も自身の糧になっています。また、皆さん既に引退されていらっしゃいますが、その中には今でも交遊の続いている先輩もいて、時々会って高説を拝聴するのは楽しみの一つになっています。

ご記憶の通り、自動車船の事業で船協加盟会社が独禁法抵触の処分を受けたことを契機に、船協での会合もそうですが、競合他社と同席するあらゆる会合の場面では、冒頭で「独禁法に触れるような内容の話はしない」と宣誓して、あるいは宣誓の署名を交わしてから会合を始めるのが、通例となりました。法令順守が重要であること論を俟ちませんが、一方で、リスク回避に慎重になり過ぎるあまり、同じ業界にいる人との接触の機会が本当になくなってしまったようにも思います。自身の意識の中でもそうなってしまっています。少し前になりますが、あるパーティーで、筆者のインタビュー記事(「課長に権限をどんどん委譲して、失敗を恐れず挑戦してもらう組織運営を目指すという内容」)を見た競合他社の若い人から挨拶をしていいかと声をかけられました。突然のことでびっくりしましたが、気づかないうちに慎重になり過ぎていたのは、自分の方だったかも知れません。

海運産業界は今、脱炭素に向けて様々な努力を試行中ですが、環境を守る、地球を守るためには、個社の努力や知恵では限界があり、個社の垣根を超えて、よりよい解決策を共有し未来に向かうべきと考えます。そのためには是非、海運会社にとどまらず、造船会社、ブローカー、商社等々、海運に携わる各社の柔軟な思考を持った『若い次世代の人』たちが集まって、アイデアを出し合うような場が用意されればと思いますし、そういう機会が設けられる後押しをしたいと強く思っています。海運は人と人とのつながりが強い産業ですが、目の前の課題の答えも人との関係を持つことで導き出されると期待します。

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

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