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2026年8月1日

大谷常任委員

AI時代の海運業
~安全と効率の両立に向けて~

日本船主協会 常任委員
飯野海運 代表取締役社長
大谷 祐介

近年、AI(人工知能)の進展は目覚ましく、産業全体においてその活用が広がっている。海運業においても、航路最適化、燃費改善、機器故障の予知、環境規制対応など、運航の効率化と安全性向上に資する技術としてAIの導入が進みつつある。一方で、海運業は、人命・貨物・環境の保全に直結する高い公共性を有しており、安全の確保が最優先である。

このため、AIの導入にあたっては、効率性のみならず信頼性や運用面での確実性を慎重に見極める必要がある。AIは高度な分析や予測を可能とする一方、その判断過程の不透明性や想定外の挙動といった課題も指摘されており、現時点では人間の判断を補完する形での活用が適当である。

まず現場導入の観点では、航海データや気象データを活用した航路最適化、燃料消費量およびGHG排出量の可視化、船内カメラとAIを組み合わせた安全管理の高度化など、現場課題に密着した取り組みなどは有効である。これらの技術は、省エネルギー、安全確保、環境負荷の低減といった海運業の基本的使命に資するものであり、実証を通じて効果と限界を確認しながら段階的に導入を進めるべきであろう。

次に、外部技術との連携においては、スタートアップをはじめ、研究機関、船級協会、機器メーカーなどとの協働による技術連携は重要である。航路最適化や環境規制対応(CII*・EU-ETS等)、予防保全、自律運航支援といった領域では、単独企業の知見では対応が難しい。業界横断的に対応し、技術の社会実装を進めることが不可欠である。

さらに、技術動向の把握にあたっては、特定の技術や事業者に依存するのではなく、海外のパートナーやベンチャーキャピタルを含めた複数の選択肢を比較し、中長期的に評価する姿勢が求められる。投資、実証、共同研究などを通じ幅広く技術動向を把握するとともに、導入前段階での評価、適用可能性、費用対効果、規制適合性を検証することが望ましい。

AIを適切に活用するためには、それを使いこなす人材の育成や組織的な管理体制の整備も必要で、技術・人材・制度を一体として整備することが求められる。今後、AIは海運業の発展に一定の役割を果たすものと期待されるが、その導入にあたっては迅速かつ慎重な検討と段階的な取り組みが不可欠である。実証に基づく知見を積み重ね、着実に活用を進めていくことが、信頼される次世代の海運業への貢献となり、海運業の持続的な発展に寄与することとなるだろう。

*CII:燃費実績格付け制度

以上
※本稿は筆者の個人的な見解を掲載するものです。

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