JSA 社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Homeプレスリリース&トピックス2007年 >欧州委員会EU競争法ガイドライン案に対する当協会コメントについて(11月12日)

プレスリリース

2007年11月12日
社団法人 日本船主協会

欧州委員会EU競争法ガイドライン案に対する当協会コメントについて

欧州連合(EU)は、06年9月、定期船同盟をEU競争法の包括適用除外とする旨規定する欧州理事会規則4056/86を08年10月18日付で廃止すること、及び06年10月18日より競争法手続法の適用範囲を不定期船分野に拡大することを決定し、これを受け、欧州委員会は、海運分野(定期船・不定期船)に対してEU競争法を適用する際に準拠するガイドライン案を07年9月14日付で発表、同日から2ヶ月間、同内容について関係者から意見を募集しておりました。
当協会は、08年10月前までに公表されるガイドライン(確定版)において、EU競争法上許容される船社間の情報交換及び不定期船分野のプール協定の基準をより明確にすること等を求める内容のコメントを、11月9日、欧州委員会に提出致しましたので、本文(英文)及び和訳を添付の上、お知らせ致します。

以上

本件に関するお問合せ先 社団法人 日本船主協会 企画部

Tel:03-3264-7174
園田・水島


2007年11月9日
欧州委員会に提出

海上運送サービスへのEC条約81条適用に関するガイドライン案についての日本船主協会コメント

海上運送サービスへのEC条約81条適用に関するガイドライン案(以下「ガイドライン案」)について、日本船主協会は以下コメントを提出する。

1.総論
海運業界は他の業界では見られない特徴を有している。それは、船社は自らの船舶で貨物を輸送する場合と、それら船舶を他の船社に貸し出す場合があるという点である。すなわち、船社同士は必ずしも常に生来の競争相手である訳ではなく、極めて頻繁に他船社の顧客となりうるのである。船社間で行なう輸送契約形態は様々であり、船荷証券(B/L)、航海用船契約(V/C)、期間用船契約(T/C)、スペース・チャーター、裸用船契約、プール協定、コンソーシアム協定及びそれらを組み合わせたものなどがある。T/C、V/C、スポット及び数量輸送契約(CoA)などが行なわれる用船市場では、ある程度相互に関連性が見られる。

こうした状況は、船舶輸送契約及び船社間の関係がかなり複雑であることを示している。EU競争法との関係を考えると、ガイドラインの中で、情報交換がもたらす現実/潜在的影響を事案毎に検討しなければならないこと、そして各プール協定も個別に審査しなければならないと言及していることは理解できる。しかしながら、個別ケース毎の審査は深刻な不確実性と曖昧性をもたらすことになり、その結果として、船社間の情報交換や水平的協定(含むプール協定)の締結/参加に際しての船社の自己判断が困難となる。

この点について、当協会は:

2008年10月までに公表されるガイドラインでは、船社間で行なう情報交換と水平的協定について、競争法に抵触するか否か容易に自己判断できるよう、より明確な基準を提供すること
どのような船社活動が競争法に抵触すると判断されるのかという点につき、船社が必要に応じ欧州委に照会できる事前相談制度を設けること

を欧州委に対して要望する。

2.定期船分野
本ガイドライン案では、2006年9月29日に発表されたIssues Paperで見られた、定期船分野が談合体質にあるという正当化されていない言及がないことについて、当協会はこれを歓迎する。当協会が2006年10月に欧州委へ提出したコメントで言及したように、定期船市場は極めて競争的である。更に、船社はこれまで法令を遵守してきており、今後もこれを続けていく所存である。

当協会は、船社間での情報交換が当業界を運営していく上で必要不可欠であると確信している。情報交換を行なうことで正確な需給予測が確保されることとなり、それは船社にとって非生産的な投資とサービスの決定を回避する上で真に有益である。また、船社がよりよい決定を行うことにより、荷主に対しても利益がもたらされるものと当協会は考える。それゆえ、欧州委が規則4056/86廃止後に船社間での情報交換を認めることについて、当協会は明確に歓迎するものである。しかしながら、ガイドライン案には依然不明確な点が多々あって様々な解釈の余地があることから、船社の落ち度ではないにもかかわらず結果的にEU競争法違反になる危険性がありうる。例えば、ガイドライン案では(当該情報交換が競争法に違反しているか否かの判断基準について)市場構造、交換される情報の種類・特性・頻度そしてデータの集計程度というような複数の要素を設定しているが、同案ではそれらの要素がどの程度重要視されるかを具体的には言及していない。その代わり、情報交換によって市場に与える現実/潜在的影響を個別に審査するとしている。更には、荷動き及び船腹量に関する過去(historic)の情報の交換は競争を制限しそうもなく、かつ情報の鮮度はある程度柔軟に判断するとガイドライン案では規定しているが、欧州委がどのような情報を“過去”の情報と解釈するのかは定かではない。

それゆえ当協会は、ガイドラインにおいて情報交換が許容される基準を明確にするよう欧州委に要望するELAAのコメントを全面的に支持するものである。

2.不定期船部門
当協会は、不定期船分野のプール協定が顧客からの益々高まる要求に応えるだけのサービス水準を提供するために結成され、長年に亘ってより効率的な配船の実現に貢献してきたものと認識している。プール協定は(顧客との間で)入札に基づく契約を取り交わし、それゆえ、運賃は大方の場合スポットマーケットによって動いており、ブローカーが重要な役割を果たす、という需給環境の中で運営されている。
顧客は、プール協定がカルテル行為とは明らかに異なる一種のジョイント・ベンチャーであるとの正当な認識の上でプールと契約を結んでいる。当協会が知る限り、用船者からのプール協定に対する苦情はなんら寄せられておらず、これはプール協定が用船者からの要望にかなっているだけでなく、欧州法に準拠していることを裏付けている。
プール協定では通常、一定の期間内で、各船社がそれぞれの資産やサービスを結合させており、合併企業の場合のように永続的に行なうのではない。それゆえ、プール協定に対する規制は合併や全機能型ジョイントベンチャーのそれより柔軟にすべきである。また、同協定が輸送サービスを改善し、または技術的/経済的効率性を改善するものであれば、EC条約81条3項に基づき競争法適用除外とすべきである。

ガイドライン案は、各プール協定は(競争法に抵触しているか)それぞれ個別に審査しなければならないとしている一方、同協定は本質的には競争法と抵触するものではないとしており、当協会はこれを歓迎する。ガイドライン案では、特に当該プール協定が81条3項に照らしての合法性を自己判断する際の明確なガイダンスを欠いているため、船社は経済的効率性という利益をもたらすプール協定の新設またはこれへの加入を躊躇することがあり得るだろう。それゆえ、当協会はより具体的な基準をガイドラインに規定するよう欧州委に対して要望するものである。また、共同入札(joint bidding)に関するガイドラインを明確化することは、船社がプロジェクト入札への参加に向けてコンソーシアムを結成する際に有益である。

プールの管理者(マネージャー)と顧客との間での運賃に関する合意は、提供されようとしている輸送サービスと表裏一体のものである。当協会は、プール機能の特性として“価格設定”を挙げ、それゆえにプール協定は過度に競争制限的(ハードコア・カルテル)であると(今後公表される)ガイドラインが言及したとすれば、それは反論には耐えられないものであると考える。

最後に、法律上許容される情報についての明確な基準は、定期船・不定期船分野を含めた全ての海運関係者にとって有益であることから、当協会は、情報交換に関するガイドラインが不定期船分野にとっても有益であると考えるものである。

以上

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保