2009年新春を迎えて
社団法人 日本船主協会
会長 前川 弘幸
新年おめでとうございます。
2009年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。
昨年は、トン数標準税制の根拠法である海上運送法等の改正法が施行され、これにより当協会が切望しておりました同税制が漸くわが国においても導入されることとなりました。また、平成21年度税制改正において船舶の特別償却制度がほぼ現行の内容で存続されることとなりました。改めまして、国会の諸先生方の海運業界に対するご理解と国土交通省ご当局の多大なるご尽力に厚く御礼申し上げます。
さて、海運業界の業績に目を転じますと、外航海運各社においては昨年夏までは好調なドライバルク市況に支えられ多くの会社が中間期最高益を更新しました。しかしながら、夏以降の市況は急落し、世界経済の減速に伴う荷動きの減少に加え円高の進行などの収益圧迫要因が重なり、2009年3月期決算では当初の予想を下方修正する会社が相次ぎました。内航海運においては、原油先物価格の急落に伴い内航燃料油価格が落ち着きを取り戻すことが期待される一方、国内の荷動き量も急速に減少をはじめており、好転の兆しを見せていた内航海運市況が急速に悪化することが強く懸念される事態となっております。中小企業が大多数を占める内航事業者の企業体力は脆弱であることから経営不安に陥ることが懸念されており、国内物資の安定輸送が今後とも維持できるよう引き続き内航海運業界への支援を関係方面に要請していきたいと思います。
昨年来アデン湾で頻発する海賊への対策が喫緊の課題となっています。海賊行為は海運業界の責務である物資の安定輸送の障害となるばかりでなく、乗組員の人命をも脅かす凶悪な犯罪です。アデン湾を航行する船舶はいまこの瞬間にも海賊の脅威に晒されています。関係各企業は可能な限りの対策を講じておりますが、武装した海賊に対し、自助努力には限界があります。一刻も早く海賊行為を防止するための効果的かつ具体的な対策を取っていただくよう政府に要望しており、その早期実現を期待しております。
海運から排出される温室効果ガス(GHG)の削減については、IMO(国際海事機関)における検討に引き続き積極的に参画し、関係当局等と連携して効果的かつ実効性のある対策が構築されるよう努めてまいります。
この他にも日本人海技者(船員)の確保・育成や日本籍船に乗組む外国人船員の承認制度の合理化・簡素化、水先制度における競争原理の導入など課題は数多いですが、一つ一つ問題の解決に全力を尽くして行く所存です。本年も関係の皆様から特段のお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
以上