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プレスリリース

2010年3月3日
社団法人 日本船主協会

ASF(アジア船主フォーラム)シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)第22回中間会合の模様について

2010年3月2日(火)に東京で開催された題記会合に関するリリース及び出席者リストを添付の通りお届けいたします

以上


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2010年3月2日、東京
(2010年3月3日東京で発表)

了解事項
アジア船主フォーラム(ASF)シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)
第22回中間会合(東京)にて採択

アジア船主フォーラム(ASF)シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)第22回中間会合は、ASFメンバーであるアセアン、中国、台湾、香港、インド、日本、韓国の各船主協会から19名の代表が出席し、2010年3月2日に東京で開催された。出席者名簿は添付のとおり。

1.世界経済
SERC出席者は、先進国における景気回復の遅れとは対照的に、中国やインドを含む主要な新興国が力強い経済成長を維持しており、引き続き世界経済の回復の中心になるとの共通認識を共有した。出席者は、意思決定を改善し、誤った判断を回避するためには、信頼性のあるトレード情報へのアクセスやマクロ経済動向の理解を通して、トレード全般の状況を正確に認識することが船社にとって重要であることに合意した。それを踏まえ、会合は、アジア船社のCEOにとって、事業運営を見直す際に、この世界同時不況の影響に関する事実や今回学んだ教訓を冷静に考慮することが重要であることを再確認した。

2.ドライバルク/タンカー部門
1)
ドライバルク市況は、バルチック海運指数(BDI)が2008年12月に歴史的な低水準を記録したが、その後は顕著な回復を遂げており、現在は、主に中国やインドにおける鉄鉱石および石炭の輸入量の増加に支えられ、波はあるものの堅調を維持していることが認識された。出席者は、中国の需要が2010年の世界の鉄鉱石海上荷動き量が史上初の10億トンを超える原動力となり、その結果、2010年に起こりうる大量の新造船引渡しへの懸念が緩和されうることに留意した。

2)タンカー部門については、2009年の市況は、先進国における原油や石油製品に対する需要低迷やシングルハルタンカーの撤退の遅れもあり、船種や航路にかかわらず低迷した。一部出席者からは、高水準の新造船供給を考慮すれば、2010年の市況は当面は軟化傾向が続くとの認識が示された。

3.定期船部門
1)
全出席者は、定期船業界全体は引き続き前例のない困難な状況にあり、2009年はおよそ200億ドルの赤字に直面したようであると認識した。現在の状況下、会合は、この危機の深刻さとその影響について荷主の正確な理解を得られよう、船社は荷主との建設的な関係を促進することが重要であることを認識した。

2)アジア域内トレードについては、アジア経済の2009年第2四半期以降の上昇傾向により、コンテナ荷動き量は2009年9月以降前年同月比で増加を維持したものの、2009年の荷動き量は2008年をわずかに下回った模様であるとの報告があった。出席者は、2010年1月1日に発効した中国・ASEAN間の自由貿易協定(FTA)により、今後一層の荷動き増加が見込まれることを踏まえると、アジア域内航路の需要は全体として好ましい傾向が続くであろうとの見解で一致したが、マーケットは依然として脆弱で、現在の低い用船料による新規参入船社の増加により、不安定さに直面しうることに留意した。

3)米国/極東トレードについて、出席者は、低迷する米国経済に応じて実施した船舶運航規模の縮小の結果として、2009年末以降、需給バランスおよび消席率はより好ましい水準にあることに留意した。全コンテナ船隊の約10%に及ぶ大量の船腹が依然として世界中に係船されており、船舶の再投入の程度によっては、北米航路の脆弱な需給バランスに容易に影響を与えうるとの懸念も表明された。

4.定期船海運に対する独禁法適用除外制度
船社間協定に対する独禁法適用除外制度について、米国、EU、インドおよび中国などの国・地域における最近の動きが報告された。出席者は、船社間協定がサービスの質や効率性に寄与し、除外制度が海運業界や貿易業界全体の健全な発展にとって不可欠であるというASFの長年の立場を認識し、除外制度の必要性や船社間協定の重要な役割について政府や荷主といった関係者の理解を求めるため、引き続き努力していくことに合意した。

5.環境問題
会合は、船社の経営に大きな影響を及ぼす環境問題に関する国際海事機関(IMO)での最近の議論の進展に留意した。出席者は、海運業界は企業の社会的責任(CSR)の一環として、船舶からの排出ガス削減に一丸となって取り組むことが不可欠であるとの認識で一致した。燃料油価格が、通常の市場原理だけでなく低硫黄燃料サーチャージのような燃料油に対する将来的な課金により、継続的に上昇することが見込まれる中で、出席者は、燃費向上に向けた新技術開発の必要性について共通認識に達した。出席者はまた、減速航行が、排出ガスを削減し、燃料消費を節減するためのひとつの効果的な手段であることに留意した。減速航行実施に関し、船社は、荷主の理解を得るため、荷主と協議し最大限の努力をすることが奨励された。

6.SERCの今後の役割
委員長はSERCの今後の役割を様々な視点から見直すことを提案し、出席者は、2010年5月25日に香港で開催予定の第19回ASF総会におけるSERC会合で意見交換することに合意した。

7.その他
1)
パナマ運河通航料について、出席者はますます高額化している通航料に深刻な懸念を表明した。会合は、世界の海運業界が直面する長引く経済危機を踏まえ、ASFとしてパナマ運河庁に対し、長期にわたる、より意味のある通航料値下げを求める内容の意見書を提出することで合意した。

2)出席者はまた、米国やアジアにおける規制の進展、運輸保安問題やWTO海運交渉など海運業界を取り巻く最近のトピックスについて意見交換を行った。

* * *

アジア船主フォーラム(ASF)シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)は、アジアの船社の上級役員が海運に関連するマクロ経済的な貿易情報やその動向を検討する場である。SERCの目的は、入手可能な経済データを考察し、主要貿易問題の展望を共有することにより、経営意思決定の質を高めることである。

*本件に関する問い合せ先: 日本船主協会 企画部 水島/笠原(Tel:03-3264-7180)


アジア船主フォーラム(ASF)
シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)
第21回中間会合

日 時:2010年3月2日(火)
場 所:東京(日本船主協会会議室

出席者
委員長
工藤 泰三 日本船主協会 常任理事
(日本郵船 社長)
メンバー
中国船主協会
Mr Chen Hua Feng (General Manager, Operation Dept., China Shipping Container Japan Co., Ltd.)
〈アセアン船主協会連合会 〉
インドネシア船主協会
Mr Jaka A Singgih (Group Managing Director, Bumi Laut Group)
マレーシア船主協会
Mr Balbino Juanito (Senior Manager-Planning, Compliance & Risk Management, Liner Business, MISC BHD)
シンガポール船主協会
Mr Goh Teik Poh (President, South Asia Region, APL Co. Pte Ltd.)
タイ船主協会
Mr Teoh Tee Hien (Executive Vice President(Trade), Regional Container Lines Group)
香港船主協会
Mr Allan T S Wong (Managing Director, Corporate Sales, OOCL Ltd.)
インド船主協会
Mr Haider Nawaz (Vice President (Business Development), Varun Shipping Company Ltd.)
日本船主協会
村上 英三 (川崎汽船 専務執行役員)
池田 潤一郎 (商船三井 執行役員)
楢岡 孝武 (東京船舶 社長)
田中 康夫 (日本郵船 経営委員・技術グループ長)
林  忠男 (日本船主協会 副会長)
韓国船主協会
Mr W W Lee (Executive Vice President, Chief Executive, Container Liner Business, Hanjin Shipping Co., Ltd.)
Mr S D Lee (Senior Vice President, Head of Liner Unit, Hyundai Merchant Marine Co., Ltd.)
台湾船主協会
Mr Daniel Liu (President, Evergreen Shipping Agency (Japan) Corp.)
Mr C K Ong (President, U-Ming Marine Transport Corp.)
Mr Randy Chen (Director, Wan Hai Lines Ltd.)
Mr R B Chiou (Senior Executive Vice President & Executive Officer of Liner Business Group, Yang Ming Marine Transport Corp.)
ASF事務局
園田 裕一 (アジア船主フォーラム事務局長)
弁護士
Mr Jeffrey F Lawrence (Partner, Sher & Blackwell)
事務局
石川  尚 (日本船主協会 企画部副部長)
水島 大二郎 (日本船主協会 企画部)
笠原 永子 (日本船主協会 企画部)
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