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プレスリリース

2010年3月26日
日本船主協会

アジア船主フォーラム 航行安全・環境委員会 第18回中間会合 プレスリリース(要約)

2010年3月19日、アジア船主フォーラム(ASF)航行安全・環境委員会(SNEC)(委員長:S. S. Teoシンガポール船協会長)の第18回中間会合がシンガポールにおいて開催され、その結果がプレスリリースされましたので、添付のとおりその概要をお知らせします。  同会合では、ASFメンバーである中国、香港、インド、日本、韓国、台湾、アセアンの各船主協会の出席の下、アデン湾における海賊問題や温室効果ガス削減問題など、船舶の航行安全および環境保全に関する多くの案件について審議されました。

以上


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2010年3月26日、於:香港

アジア船主フォーラム 航行安全・環境委員会第18回中間会合の結果について

1. アジア船主フォーラム(ASF)航行安全・環境委員会(SNEC)の第18回中間会合が、シンガポール船主協会主催の下、2010年3月19日、シンガポールにおいて開催された。

2. 会合には、中国、香港、インド、日本、韓国、台湾、およびアセアン(アセアン船主協会連合:インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの船主協会により構成)の各船主協会代表19名が出席した。

3. シンガポール船協の会長であるS. S. Teo氏がアセアン船協を代表して本会合の議長を務めた。

4. 本会合を通じて、SNECは、船舶の航行安全および海洋環境の保護に関する多くの問題について検討し議論を行った。

・海賊および武装強盗
SNECは、2009年の世界の海賊事件発生件数が、2008年と比べ約40%増加したことに重大な懸念を表明した。特に、報告された事件の50%以上がソマリア沖水域、アデン湾および紅海において発生し、47隻がハイジャックされ、867人が人質として捕らえられたことに留意した。

SNECは、アデン湾における海賊行為とハイジャックの深刻な脅威を認識した上で、この問題の解決に向けたさらなる取り組みを行い、アデン湾およびソマリア沖を航行する国際海運の安全を確保するよう、各国政府および国際連合に強く要請するものである。それと同時に、SNECは、すべての通航船舶が引き続き厳重な警戒を行うとともに、本問題に取り組む国際海事機関(IMO)により承認された“The Best Management Practices” (※1)を採用すべきことを合意した。船主はMSCHOA(Maritime Security Center ‐ Horn of Africa)(※2)によって提供されている任意の通報システムを採用するとともに、同海域に配備されている多国籍海軍によって実施されているエスコート・保安サービスの支援を受けるべきである。

・ 海賊行為に対する身代金の支払いを禁止する米国提案
SNECは、海賊を抑止する効果的な取り組みをせずに、身代金の支払いを禁止するという米国提案は、海賊によって人質として捕らえられた船員に対して多大な悪影響をもたらすであろうことに重大な懸念を表明した。かかる提案は、船員の家族にさらなる心労を負わせることになるだろう。

SNECは、メンバー船協に対し、本問題に関する懸念を自国政府へ伝えるよう要請する。

・ インドによる飛翔体打ち上げ実験(NAVAREAⅧ航行警報)
SNECは、インド政府水路部が、2010年2月初旬に、2010年2月7日と9日にすべての航空機および船舶に対してベンガル湾全域を一方的に封鎖したNAVAREAⅧ航行警報(※3)を発出したことに重大な懸念を表明した(インドの新聞報道によると、ベンガル湾の封鎖はインドの弾道ミサイル“Agni Ⅲ”の発射実験のためであった模様)。
SNECは、海上輸送の要衝であるベンガル湾の封鎖を、余りにも突然かつ一方的に通知することは、IMOの規則に従っていないと考える。

・ バラスト水管理条約
SNECは、海上安全および海洋環境保全を強化するすべての取り組みを支持するものの、バラスト水管理条約が間もなく発効する見通しにあることを懸念している。IMO基準に適合したバラスト水処理装置は多く存在し、入手可能ではあるものの、これらの装置は、すべての船種および船型において必ずしも実際に使用できるとは限らない。同条約の規定に適合しない船舶は、条約発効以降、条約締約国から入域を禁止されるため、すべての船種および船型に対して適用できる装置がないことは、海運業界に重大な影響を及ぼすだろう。

さらに、SNECは、バラスト水処理装置の搭載が船舶のエネルギー効率(燃費)に関して予期せぬ結果(マイナスの効果)をもたらすであろうことに懸念を表明した。

SNECは、各国が、多くの取り組むべき実行上の問題が残っていることを批准の前に十分考慮することを期待する。

・ 船舶からの温室効果ガス(GHG)排出
SNECは、2009年12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)におけるコペンハーゲン合意には、国際海運に関するガイダンスが何ら含まれていなかったことに遺憾の意を示した。

SNECは、各国による一方的な規制の適用を避けるため、IMOには船舶からのGHG排出削減を目的とするロードマップの策定に関して積極的な役割を果たすべき責任があると認識している。

最後に、SNECは、採択されるいかなる削減対策もIMOの原則(※4)を満足すべきことを改めて表明する。

5. SNECメンバーは、第18回中間会合を主催したシンガポール船協に対して感謝の意を表明した。


*********

(※1)Best Management Practices:
ソマリア沖・アデン湾における海賊からの攻撃を防ぐための船主および船舶に対するガイダンス。国際海運会議所(ICS)等の国際海運団体が起草し、国連の海賊問題に関するコンタクトグループおよびIMOにおいて承認されている。

(※2)MSCHOA:
欧州保安自衛政策イニシアティブの一環として、「アフリカの角地域」(ソマリア沿岸)の海賊に対処するため、2008年9月にEUによって設立。ブリュッセルに本拠を置き、広範な海事社会とのリンクを設立して、「アフリカの角」地域でのEU軍の運用との調整を担っている。

(※3)NAVAREA航行警報:
世界航行警報システムに基づき、大洋を航行する船舶の通航海域に係る航行安全情報を提供する。世界の海域を16の区域に分割し、各区域を担当する国より、インマルサットEGCシステム(自動印字方式放送)により情報提供される。インドは第Ⅷ区域(インド洋)を、日本は第ⅩⅠ区域(北太平洋南西部および東南アジア海域)の担当国となっている。

(※4)IMOの原則:
IMOは、国際海運からのGHG削減のための経済的手法が満足すべき事項として、以下の9つの原則を掲げている。
1 地球規模のGHG総排出量の削減に効果的に貢献
2 抜け道を防ぐため、拘束力を有しすべての旗国に平等に適用
3 費用に見合う効果が得られること
4 市場歪曲を防止(少なくとも効果的に最小化する)
5 世界の貿易と成長を阻害せず、持続可能な環境開発に基づくこと
6 目標達成型アプローチにより、具体的手法を規定しない
7 海運産業全体の技術革新・研究開発の促進・支援に役立つこと
8 エネルギー効率分野の主導的技術に対応していること
9 実用的で、透明性があり、抜け道がなく、管理が容易

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