7・3  船員の社会保障制度及び労働協約の改訂

 

731 船員の社会保障制度の概況

(1) 適用状況の推移

船員法上の船員を対象とした船員保険及び厚生年金保険(第三種被保険者のうち船員)の適用事業所並びに被保険者数は、海運・水産業界の厳しい状況を反映して斬減傾向が続いており、20063月末の船舶所有者ならびに被保険者数は、前年に比べてそれぞれ55船主、2,899名の減少で、6292船主、64,834名となっている。(資料7-3-1-1参照)

(2) 船員保険の財政状況

船員保険の財政は、被保険者数の減少に伴い、保険料収入も減少する一方で、疾病部門、失業部門の財政が引続き大幅な黒字のため、2006年度の収支は、全体で49億円の黒字で4年連続の黒字決算となった。これにより2005年度の船員保険全体の積立金残高は、1,169億円となった。(資料7-3-1-2資料7-3-1-3参照)

@疾病部門

2005年度は、収支が前年度に比べ20億円悪化したものの34億円の黒字となった。

A失業部門

2005年度は、前年度に引き続き20億円の黒字となった。

B年金部門(労災)

2005年度は、保険料収入がわずかに減少し、収支は前年度より改善したものの27億円の赤字となった。

年金部門の財政は、被保険者数の減少に比べ、年金受給者の減少が小幅に留まるため、今後赤字幅が拡大していくことが懸念され、船員保険収支全体に与える影響が最も大きい部門である。

 

    

732  船員保険制度の改革

1)船員保険事業運営懇談会

船員保険は、200612月に「船員保険事業運営懇談会」(座長:岩村正彦 東京大学大学院教授、事務局:社会保険庁)が取りまとめた報告書に従って20074月に法令改正が行われ、20101月より雇用保険と労災保険分野が陸上一般制度に統合され、両分野の一般制度を上回る部分と船員独自の福祉分野は健康保険分野とあわせて新船員保険として「全国健康保険協会」によって運営されることが決定している。

(年報2006年参照)

船員保険の福祉施設について同告書では、現行の船員保険が保有している福祉施設については、新たな船員保険制度のもとでは保有しないこととされているものの、その整理合理化の具体的な進め方などに関して新船員保険制度発足までの間、引き続き同懇談会で検討することとされた。

これをうけ、船員保険事業運営懇談会は平成199月に「船員保険事業運営懇談会施設検討小委員会」(座長:野川忍 東京学芸大学教授)を設け、整理合理化の具体的な進め方などに検討を開始し、これまでに7回の小委員会が開催された。(資料7-3-2-1資料7-3-2-2参照)

当協会も同施設検討集委員会に委員として参画し、保養所等の所謂「箱物」を通じての福祉事業は非効率であることから、当協会はその廃止を主張しているが、今後も同小委員会に参加している他の船主団体と連携してその廃止乃至は縮小を目指すこととしている。

 

 

7.3.3 労働協約の改定等

1)労働協約改定

外航労務部会と全日本海員組合は労働協約改定を以下の通り行った。

@平成19年度労働協約改定

有効期間の改定を行う協定書の締結及び平成1911日施行の「国民の祝日に関する法律」の一部改正に伴う年間休日に関する確認書並びに「救命設備ならびに訓練について」の確認書より「LNG」および「LPG」の船側大書きの項目を削除する確認書を締結して、平成19年度の協約が確定した。

A平成20年度労働協約改定

外航労務部会と全日海は中央の労働協約について、平成13年度に賃金関連項目を各社個別で協議することを合意し、さらに平成15年度には協約書の労使当事者間が遵守すべき権利・義務関係を定めた債務的部分と休日休暇制度などを含む労働者の待遇を含めた規範的部分に分け、後者については一部を除き個別協議が可能として合意したことから、平成13年度以降、中央における労働協約改定交渉は開催されてこなかった。

平成20年度の協約改定にあたっては、有効期間の改定、船員保険の標準報酬月額の改定に伴う労働協約の「傷病見舞金」及び「災害補償」について必要な整理の他、中央で協議を行うこととして整理されている「人事」に係わる「妊娠出産する女性船員に必要とされる制度」に関して組合側より要求がなされたことから、平成2037日に7年ぶりの中央交渉となる「外航労働協約改定交渉」を開催した。

その結果、有効期間の改定、船員保険の標準報酬月額の改定に伴う労働協約の「傷病見舞金」及び「災害補償」について必要な整理を行うこと、及び女性船員に関する事項については協議会を設置して協議することを合意することにより、即日妥結して平成20年度の協約が確定した。

2LNG等に関する特別委員会

外航労務部会と全日本海員組合は平成19926日、「LNG等に関する特別委員会」を開催し、日本籍国際船舶LNG船の日本人配乗構成に関して協議の結果、日本人職員を4名以上とすることについて合意した。