2010年5月31日
国土交通省が外航海運検討会報告書を公表
?競争条件均衡化が施策の柱に?
国土交通省は、2009年10月、前原大臣主導の下、同省所管産業のうち、海洋、観光、航空、国際展開・官民連携の4分野(後に、住宅・都市も対象に加え、5分野となる)を「特に、さらなる発展が期待できる分野」と位置付け、各分野の成長に向けた政策提案を行う国土交通省成長戦略会議(座長:長谷川閑史 武田薬品工業社長)を発足させた。
海洋分野に関しては、「海洋立国日本の復権」をスローガンに、主として外航海運および港湾に関し、国際競争力の強化に向けた議論が行われることとなった。
そのうち外航海運に関しては、三日月政務官の主催により、2009年12月、外航海運検討会(座長:柳川範之 東京大学大学院経済学研究科准教授)が設置され、学識経験者を中心とする海事関係有識者に加え、当協会宮原会長、日本内航海運組合総連合会上野会長、日本造船工業会元山会長もメンバーに参画して審議が行われることとなった。
検討会は、2010年5月までの間に計7回開催され、第2回検討会(09年12月24日)においては、宮原会長より、外航海運の成長性、日本荷主との長年のパートナーシップ(船型開発、長期契約等)、定期船における日本顧客重視(日本直航の維持等)、海事クラスターの中核としての役割(船舶投資等を通じた貢献)及び外国船社とのコスト競争において障害となる税制の差異(トン数標準税制の適用範囲、圧縮記帳、船舶減価償却制度等)などについてプレゼンテーションがなされた。また、当協会はその他の回においても、国際的な競争条件均衡化の必要性などにつき資料や意見書を提出し、繰り返しメンバーの理解を求めた。
こうした説明により、外航海運におけるイコールフッティングの必要性に関しては概ねメンバーの合意が得られ、その要点は適時国土交通省成長戦略会議に報告された。
この結果、外航海運検討会の報告書取りまとめに先立ち公表された国土交通省成長戦略会議の最終報告書(2010年5月17日)には、「優先して実施すべき事項」として外航海運の国際競争力強化が盛り込まれ、具体政策として、以下4点が提言された。
- トン数標準税制を諸外国並みに拡大
- 船舶の特別償却制度、買換特例制度の維持・拡大
- 船舶に係る登録免許税、固定資産税の徹底的軽減
- 日本商船隊の中核である日本籍船の増加に向けたコスト削減策の展開(船舶設備・船員の資格に関する手続きの見直し)
その後、外航海運検討会として最終回となる第7回会合が5月19日に開催され、上記の4点を含む以下6項目を今後の施策の柱とする報告書が取りまとめられ、5月27日に公表された。
- 日本籍船を中核とする日本商船隊の国際競争力強化
→トン数標準税制の適用の拡大、船舶の特別償却制度および買換特例制度の維持・拡大、日本籍船に係る固定資産税、登録免許税等の負担軽減、独占禁止法の適用除外制度のあり方に関する議論の整理 - 「海洋立国日本」を支える船員(海技者)の確保・育成のための基盤整備
→日本人船員(海技者)の雇用推進のためのインセンティブ付与、船員という職業の認知度向上のための取組み等 - 日本籍船増加を妨げる各種規制の見直し
→船舶の日本籍取得手続き容易化事業、外国人船員に関する各種資格制度の簡素化、電波・通信に関する船舶設備に関する検査等の手続きの簡易化等 - 内航海運の競争力強化、内航海運・港湾との連携
→内航フィーダー網充実のための総合対策等 - 海運分野におけるその他の制度の改革等
→水先制度の指名制トライアル事業の充実 - 造船・舶用工業の競争力強化、国際競争条件の均衡化
→国際海運での温暖化防止対策として、我が国主導での新造船・既存船規制の条約化等
報告書が我が国外航海運の成長性・将来性を正しく認識し、我が国商船隊の国際競争力の向上に焦点を当てた広範な施策案を提言したことを、当協会として高く評価し、政務官・座長をはじめとする関係者の尽力に深く感謝する次第である。今後は、報告書に盛り込まれた提言が、平成23年度予算をはじめとした実際の施策において確実に実行されるよう、引き続き意見反映に努めることとしている。
- 国土交通省成長戦略会議の報告書、委員名簿、資料等は以下国交省ウェブサイトを参照
http://www.mlit.go.jp/policy/kanbo01_hy_000575.html - 外航海運検討会の報告書、メンバー名簿は以下国交省ウェブサイトを参照
http://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji01_hh_000056.html
以上