JSA 社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Home海賊問題 海賊インフォメーション >2009年IMB報告の概要

海賊問題

ソマリア沖・アデン湾での海賊事件が倍増
―2009年の海賊事件発生状況―
 国際商工会議所(ICC)の下部組織である国際海事局(IMB)は、2009年に世界で発生した海賊等事案について報告書を発行しました。また、国土交通省海事局は、2009年に日本関係船舶が受けた海賊行為等による被害状況について調査結果を公表しました。これらの概要については以下のとおりです。
 なお、政府等関係機関に対して防止対策の強化を要請する上で実態把握が重要となります。関係各社におかれましては、海賊事件に巻き込まれた際には、関係先への通報を徹底いただきますよう、よろしくお願いいたします。

1.2009年IMB海賊レポート概要
 2009年に報告のあった海賊事件は、前年より113件多い406件(約39%増)となり、3年連続して増加した。地域別に見ると、東南アジア地域は減少傾向にあるものの、その他の地域で増加し、特にアフリカ地域は前年比約40%増の264件となり、発生件数全体の約65%を占めた。
 
<アフリカ地域>
 アデン湾/紅海を含むソマリア周辺海域における海賊事件は、前年比倍増の217件に上った。ソマリアの海賊に対し各国に積極的な対応を促す国連・安全保障理事会決議等を踏まえ、日本を含む多くの国が艦船等を派遣しており、海賊事件は前年比倍増しているものの、ハイジャックが成功した件数を見ると、2008年に45件のところ2009年は47件とほぼ横ばいであり、各国艦船等の護衛活動の成果が現れている。
 2008年は海賊事件の発生はアデン湾に集中していたが、2009年の第4四半期では3分の2がソマリア東方沖での発生となっており、発生地域が拡大する傾向が見受けられる。また、ソマリア東方沖1000マイル以上の海域においても海賊事件が発生した。
 2009年の47件のハイジャック事件において867名が人質となり、死者(4名)、行方不明者(1名)も出ている。2009年12月末現在、12隻の船舶と263名の人質が未だ解放されずにいる(2010年1月末現在では12隻、245名)。
<東南アジア地域>
 他の地域では前年に比し増加するなか、唯一東南アジア地域は54件から45件に減少し、特にインドネシアでは28件から15件へと半減した。沿岸地域各国の協力体制が確立され、警備が強化されたことにより、同地域では2003年より減少傾向が続いているが、IMBは警戒を怠ることのないよう注意を喚起している。
<その他の地域>
 極東地域は前年比倍増の23件に上った。そのうち南シナ海は、前年の0件から13件へと急増、13件のうち12件は船内に乗り込まれ、うち数件は乗組員が船橋から追い出され、短時間だったものの、操縦不能の状態となるケースがあった。
 さらに、ペルー(カラオ港等)やバングラディシュ(チッタゴン港等)も、前年より増加しており、停泊・錨泊中の警戒が未だ必要な状況である。([表1-4]参照)

[主な事件の概要]
(1) 2009年3月19日1430UTC(世界時)頃、セントビンセントおよびグレナディーン諸島籍ばら積み船 ‘MV Titan’ が、アデン湾内を航行中(北緯12度35分、東経047度21分)にAK47自動小銃と拳銃で武装した6名の海賊に襲撃されハイジャックされた。海賊は乗組員24名を人質に取り、同船をEyl(ソマリア東海岸)へ回航した。2009年4月15日、人質、船舶共に解放された。人質を無事解放させるため身代金が支払われたと伝えられている。

(2) 2009年4月7日1140UTC(世界時)頃、米国籍コンテナー船 ‘MV Maersk Alabama’が、ソマリア沖を航行中(北緯06度27分、東経054度31分)に武装海賊に襲撃された。小型モーターボートから自動小銃で発砲され、結果的に乗り込まれハイジャックされた。2009年4月8日に本船は解放されたが、海賊は船長を人質に取りライフボートで逃走した。2009年4月12日、海軍は人質を救出した。海賊1名は拘留され、残りの海賊は殺害された。

(3) 2009年11月11日0105UTC(世界時)頃、マーシャル諸島籍ばら積み船 ‘MV Filitsa’ が北緯00度35分、東経062度40分のソマリアのモガディシュの1050マイル東を航行中に武装海賊に攻撃されハイジャックされた。海賊は22名の乗組員を人質に取り、同船をソマリアへ回航した。

(4) 2009年11月16日0942UTC(世界時)頃、キリバス籍ケミカルタンカー ‘Theresa Ⅷ’ が、ソマリア沖を航行中(南緯08度00.1分、東経045度58.4分)に武装海賊に襲撃されハイジャックされた。武装海賊は攻撃を加えながら乗船した。海賊は28名を人質に取り同船をソマリアへ回航した。

(5) 2009年12月28日0020LT(地方時)頃、パナマ籍ばら積み船 ‘MV Nikolis ’が、ナイジェリアのラゴス錨地(北緯06度20.5分、東経003度26.0分)にて投錨作業中に武装した約10名の海賊にボートから攻撃された。自動小銃で武装し、6?7名の海賊が本船に乗り込み、乗組員の私物、船用品および備品などを強奪し逃走した。乗組員のうち3名が負傷し、その中の1名は重症であった。IMB海賊情報センターは同船から被害連絡を受け、ナイジェリア当局に負傷した乗組員たちの支援を要請した。

(6) 2009年12月2日0448LT(地方時)頃、キプロス籍ばら積み船 ‘Arya Payam’ が、シンガポール海峡 Tanjung Bulat沖(北緯01度18.86分、東経104度14.42分)に錨泊中、木製ボートで接近してきた5名のうちの1名が本船に乗り込み船用品を盗み出そうとした。当直航海士がこれに気付き、船内に警報するとともに、VHFにて周辺船舶へ通報した。賊は海中へ飛び込み逃走した。被害はなかった。

[表1]海賊発生件数推移
表1海賊発生件数推移

[表2]世界各地域の海賊発生件数の比較
表2世界各地域毎の海賊発生件数の比較

[表3]主要7か国・地域の海賊発生件数(過去3年同期比較)
海賊発生件数2006 海賊発生件数2007
海賊発生件数2008
[表4] 乗組員・乗客の被害状況(過去3年比較)
被害状況2007 被害状況2008
被害状況2009
2.2009年日本関係船舶における海賊等被害状況
 国土交通省海事局において、わが国外航海運事業者等からの報告を基に、2008年の1年間に日本関係船舶(日本籍船および日本の事業者が運航する外国籍船)が海賊等から受けた被害の状況が概要以下のとおりまとめられた。

(1) 被害件数
2009年において、日本関係船舶が海賊に襲われた件数は5件で、昨年の12件から減少した([表5]、[表6]参照)。被害船の船籍別内訳は、パナマ籍3隻、ケイマン諸島籍、ドイツ籍が各1隻、日本籍が0隻であった。
(2) 発生海域
地域別に見ると、東南アジア周辺2件、アフリカ周辺3件(うちソマリア沖1件)発生している。
(3) 被害状況
ソマリア沖では、ソマリア東方約900kmの海域(公海上)において、航行中の船舶が小型船から鉄火器らしきものによって発砲を受け、操蛇室やレーダーマストに数発被弾し、追跡を受けるという事案が1件発生した。また、東南アジアでは、タイの沿岸付近(領海内)において、航行中の船舶が小型船から銃火器らしきものによって発砲を受け、居住区画に数発被弾し、追跡をうけるという事案が一件発生しているが、いずれも回避操船によって海賊の追跡を振り切っている。その他シンガポール沖を航行していた船舶に対する襲撃では、武装した賊に日本人船長等が一時拘束され、金品等が奪われる事案が発生したが、それ以外は錨泊中に発生した軽微な事案となっている。なお、被害船に乗船していた全ての乗組員に怪我等はなかった。

[表5]わが国関係船舶における海賊行為等による被害発生件数の推移
わが国関係船舶における海賊行為等による被害発生件数の推移

[表6]
日本関係船舶における海賊等事業案について
  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保