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海賊問題

海賊発生件数が4年連続で増加
―2010年の海賊事件発生状況―
  国際商工会議所(ICC)の下部組織である国際海事局(IMB)は、2010年に世界で発生した海賊等事案について報告書を発行しました。これらの概要については以下のとおりです。
 なお、政府等関係機関に対して防止対策の強化を要請する上で、海賊事件の実態把握が重要となります。関係各社におかれましては、海賊事件に巻き込まれた際には、関係先への通報を徹底いただきますよう、よろしくお願いいたします。

1.2010年IMB海賊レポート概要
 2010年に報告のあった海賊事件は、前年より35件多い445件(約8.5%増)となり、4年連続して増加した。(表1参照)  地域別に見ると、アフリカ地域はやや減少傾向となったものの、依然として事件は多く発生件数全体の約58%を占めた。また、東南アジア、極東地域において、それぞれ前年比56%増、91%増となり、発生件数全体の約26%を占めた。(表2参照)
 また、事件の増加に伴い、被害に遭った乗組員・乗客の数も増えており、2010年は1181人(前年比12%増)が人質となり、2006年の約6.3倍となっている。(表3参照)
 
<アフリカ地域>
 紅海を含むソマリア周辺海域における海賊事件は、前年とほぼ変わらない219件であったが、アデン湾での事件件数が53件(前年比55%減)と半分以下に減少した一方で、ソマリア沖・インド洋での発生件数は141件(前年比64%増)と大幅に増加した。各国政府による海賊対処活動や各商船による海賊対策の強化によりアデン湾での発生件数は減少したが、海賊の活動エリアが広がったため、ソマリア沖、紅海、インド洋などの艦船の活動範囲が及ばない海域では事件が増加している。
 2010年には49件のハイジャック事件が発生し、1016名(前年比17%増)が人質となり、負傷者13名、死者も8名出ている。2010年12月末現在、28隻の船舶と638名の乗組員等が未だ解放されずにいる。
 なお、2010年にIMBの海賊情報センター(PRC)が報告を受けた海賊事件(445件)のうち219件が、ソマリア海賊に関係しているものと見られている。

<東南アジア地域>
 年々減少傾向にあった東南アジア地域であるが、2010年は前年の46件から70件に増加し、特にインドネシアでは15件から40件へと増加した。沿岸各国の協力体制が確立され、警備が強化されていたが、武装した海賊は主に夜間航行中の船舶に侵入し金品を強奪して逃走している。また、マレーシアでも事件件数が4年連続増加しており、今年はハイジャック2件を含む18件が報告されている。
 一方、極東地域でも23件から44件と事件件数は倍増しており、南シナ海、特にアナンバス諸島、ナツナ諸島、マンカイ島付近では予断を許さない状況である。

<その他の地域>
 ソマリア海賊は乗っ取った船舶を母船として利用し、インド洋にまで活動の範囲を広げている。

[主な事件の概要]
(1) 2010年5月5日、0400UTC(世界時)頃、リベリア籍タンカー‘Moscow University’が、ソマリア沖を航行中、北緯12度15分、東経059度30分地点で、自動小銃で武装した10名の海賊が乗った小型ボートから発砲された後、乗り込まれハイジャックされた。護衛艦とヘリコプターが救助に来るまでの間、23名の船員は施錠された操舵機室に避難していたため、船員は全員無事に救出、海賊は拘留された。タンカーは若干の被害を被ったが、安全な海域まで軍艦にエスコートされた。

(2) 2010年9月5日、0305LT(地方時)頃、パナマ籍ケミカルタンカー‘Chemroad Luna’が、南シナ海アナンバス諸島付近を航行中、北緯03度14.2分、東経105度17.2分地点で、長刀を持った4名の海賊に乗り込まれた。2名の見張り要員が襲われ、金品を強奪されたが、船員に怪我はなかった。

(3) 2010年10月10日、1338UTC頃、パナマ籍一般貨物船‘ Izumi’が、ソマリア沖を航行中、ケニア・モンバサ北東沖約70マイル付近(南緯03度28分、東経040度49分)で、武装した海賊に襲撃されハイジャックされた。同船は2011年2月25日に解放された。

(4) 2010年11月9日、0547UTC頃、パナマ籍ケミカルタンカー‘Floyen’がソマリア沖を航行中、北緯01度05分、東経053度10分地点で、ロケットランチャーとライフルで武装した海賊が乗った2隻の小型ボートにより追跡され、発砲された。タンカーは緊急信号を発信、船員全員がシタデル(船内篭城設備)に逃げ込んだ。一方で乗船していた武装セキュリティーガードが交戦、海賊は襲撃を諦めた。同船はロケットランチャーによる被害を受けた。

[表1]海賊発生件数推移
表1海賊発生件数推移

[表2]世界各地域の海賊発生件数の比較
表2世界各地域毎の海賊発生件数の比較

[表3] 乗組員・乗客の被害状況(過去3年比較)
海賊発生件数2008

被害状況2008

被害状況2009

被害状況2010

2.2010年日本関係船舶における海賊等被害状況
 国土交通省海事局は、わが国外航海運事業者等からの報告を基に、2010年の1年間に日本関係船舶(日本籍船および日本の事業者が運航する外国籍船)が海賊等から受けた被害の状況を概要以下のとおり取りまとめた。

(1) 被害件数
 2010年に海賊等の被害(単に船舶に乗り込まれたものを含む)を受けた日本関係船舶は15件(前年:5件)で、昨年の5件より増加した。被害を受けた船舶の船籍別の内訳はパナマ籍14隻、香港籍1隻であり、日本籍船はなかった。
(2) 発生海域
 発生海域別に見ると、東南アジア周辺で9件、インド洋およびアフリカ周辺海域で6件発生している。
(3) 被害状況
 航行中の船舶が小型船から銃火器らしきものによって発砲を受け、船体に被弾、追跡を受けるという事案が、ソマリア沖・アデン湾で2件、インド洋において3件発生した。いずれの事案も回避操船等によって海賊の追跡を振り切っている。また、ケニア沖では、ハイジャック事案が1件発生した。
 東南アジアにおいては、南シナ海を航行していた船舶が襲撃され、ナイフで武装した賊に乗組員が拘束されることにより、金品等が奪われる事案が2件発生したが、それ以外は錨泊中に発生した軽微な事案であった。

[表4]日本関係船舶における海賊行為等による被害発生件数の推移(過去10年)
日本関係船舶における海賊行為等による被害発生件数の推移
注)計上されている発生件数は、人的・物的被害が発生した事案のほか、単に船舶に乗り込まれた事案も含めた数である。船舶に対して直接的な接触がなかった未遂事案は件数に含まれていない。
なお、この発生件数は、外航海運事業者等から任意に提供された事案のみを計上したものである。


[図5]日本関係船舶における海賊等事案発生状況
日本関係船舶における海賊等事業案について
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