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海賊問題

海賊発生件数過去5年間で最低を記録
—2012年の海賊事件発生状況—
 国際商工会議所(ICC)の下部組織である国際海事局(IMB)は、2012年に世界で発生した海賊等事案について報告書を発行しました。これらの概要は以下のとおりです。
なお、政府等関係機関に対して防止対策の強化を要請する上で、海賊事件の実態把握が重要となります。関係各社におかれましては、海賊事件に巻き込まれた際には、関係先への通報を徹底いただきますよう、よろしくお願いいたします。

2012年IMB海賊レポート概要
 2012年に報告のあった海賊事件は、297件と前年より大幅に減少(前年比約32.3%減)し、過去5年間で最低となった。(表1参照)
 ソマリア海賊による事件が激減したことにより全体的な発生件数は減少しているものの、アフリカにおける事件は150件報告されており、依然として最も危険な海域であることに変わりはない。また東南アジアでは増加傾向となり、前年比約30%増となった。(表2参照)
 一方、被害に遭った乗組員・乗客の数は大きく減少し、2012年は662名(前年比約26%減)、人質に関しても585名(前年比約27%減)となった。(表3参照)
 なお、発生海域別にみると、全体では1位インドネシア 81件、2位ソマリア沖 49件、3位ナイジェリア 27件とアフリカ、東南アジアでの事件が顕著であった。またハイジャック件数ではソマリア沖で10件、続いてアデン湾、ナイジェリア、トーゴでそれぞれ4件となった。(表4参照)
 民間武装ガードの採用や、各国海軍による海賊対処活動および各商船による海賊防止対策等が功を奏し、ソマリア海賊による事件が大幅に減少する一方で、ナイジェリアなど、西アフリカでの事件は増加傾向にある。  

<アフリカ地域>
 紅海を含むソマリア周辺海域における海賊事件は、前年のおよそ3分の1の75件と大幅に減少した。また、同海賊におけるハイジャック件数も前年の28件から14件へと半減した。一方、ギニア湾沿岸諸国では増加傾向にあり、ナイジェリア 27件、トーゴ 15件など合計58件の海賊事件が発生した。
 ソマリア海賊による事件件数は、各国政府による海賊対処活動やBMPの徹底など各商船による海賊対策の強化、民間武装ガードの採用等により大幅に減少したが、脅威は依然として大きく、活動も広範囲に及ぶため、海軍や各商船による警戒は不可欠である。
 また2012年の銃撃事件の全て(28件)がアフリカ海域で発生しており、ハイジャック発生件数を例にとっても、全体の件数が28件であったのに対し、アフリカ海域は24件(含むオマーン)と依然として危険海域であることに変わりはない。2012年12月31日現在、8隻の船舶と104名の乗組員等がソマリア海賊により拘束されているほか、陸上でも23名が誘拐されたままとなっている。

<東南アジア地域>
 東南アジアにおける海賊事件は2010年以降増加傾向にある。シンガポール海峡、マレーシアでは、それぞれ6件、12件と昨年に比べ減少しているが、全体としては前年の80件から104件に増え、前年比30%増となった。特にインドネシアでは2009年以降、海賊事件が増加を続け、前年から約76%増の81件の窃盗事件が報告されている。

<その他の地域>
 2011年に比べ、南米では減少傾向となった。またバングラデシュにおいては前年より1件増加したものの、同国沿岸警備隊による警備強化によりここ数年大幅に減少している。しかし、武装強盗による活動は未だ散見される状況で、チッタゴン周辺での停泊時には注意が求められている。

[主な事件の概要]
(1) 2012年4月6日、0505UTC頃、パナマ籍一般貨物船’Xiang Hua Men’がソマリア沖を航行中、オマーン湾沿岸のバンダル・ジャスク(イラン)南西沖16マイル付近(北緯25度28分、東経057度32分)で、武装した海賊に襲撃され乗っ取られた。船長は警報を鳴らし乗組員をシタデル(船内籠城設備)に招集したが、海賊は乗組員を人質に取りハイジャックに成功した。通報を受けたイラン護衛艦が本船へ接近、海賊との銃撃戦の末、海軍は奪還に成功し9名の海賊を拘束、乗組員28名全員が救出された。

(2) 2012年5月10日、0923UTC頃、リベリア籍タンカー‘Smyrni’がソマリア沖を航行中、オマーンのマドラカー岬南東沖250マイル付近(北緯15度58分、東経061度02分)で、自動火器で武装した海賊10名を乗せた2隻のスキフに追跡された。本船はスピードをあげ、海賊対処措置により乗り込みを回避するも、スキフはその後2度目の襲撃を試み24ノットで接近、26名の乗組員を人質に取りハイジャックに成功した。

(3) 2012年5月23日、0900UTC頃、米国籍一般貨物船‘Maersk Texas’はソマリア沖を航行中、オマーン湾沿岸のバンダル・ジャスク(イラン)西南西28マイル付近(北緯25度29.6分、東経057度16.8分)で、本船船首右舷方向2マイルのところに10隻のスキフ集団を発見した。前方のスキフが集団を抜け出し20~25ノットで本船に接近してきたため、船長と保安要員は警報を鳴らし、高圧水銃とSSAS(船舶安全警報装置)で対応、スピードをあげ回避行動をとった。スキフが500メートル内に接近してきたので、警告射撃を行ったがスキフはそれを無視し、更に接近してきた。このとき武器を所持しているのが確認された。300メートル地点で再度発砲すると、スキフは本船へ応射してきた。さらに港側からも11隻のスキフが本船へ向かってくるのが確認されたが、これらのスキフは警告射撃により撤退した。本船船首右舷方向のスキフは約12分後、付近のダウ船の方へと去って行った。乗組員にけがはなかった。

(4) 2012年6月20日、0505UTC頃、マーシャル諸島籍タンカー‘LNG Aries’がソマリア沖を航行中、オマーンのマシラ島北東沖35マイル付近(北緯20度50.8分、東経059度30.2分)で、ダウ船に乗り、銃とRPG(携帯式対戦車ロケット弾発射機)で武装した海賊に発砲された。ダウ船はタンカーへ接近し50メートル地点で発砲、3発がタンカーに直撃したものの、海賊対処措置により海賊は撤退した。

(5) 2012年12月15日、1458UTC頃、デンマーク籍プロダクトタンカー‘Torm Kristina’がソマリア沖を航行中、オマーンのマスカット北西沖約80マイル付近(北緯24度36.2分、東経057度32.3分)で、武装した海賊を乗せたスキフに追跡、発砲された。船長は警報を鳴らして、回避行動をとるとともに、UKMTO(英海軍海運情報センター)に連絡し、救難信号を発信、全乗組員をシタデルへ招集した。付近の海軍が救助信号を受信し乗組員の救出に向かったところ、海賊はすでに撤退しており、タンカーは航行を続けた。

(6) 2012年12月18日、1030UTC頃、ソマリアのボサソ港(北緯11度18.1分、東経049度09.26分)において、不法投棄の罪で2012年11月17日からプントランド自治当局に拘束されていた北朝鮮籍一般貨物船‘Dae San’が護衛兵によりハイジャックされた。本船では8名のプントランド海上警察職員(警察官4名、護衛兵4名)が船の護衛にあたっていたが、4名の護衛兵は海賊からの報酬を目的に船をハイジャックしたとみられている。その後本船は引き返し、12月20日ボサソ港へ帰港した。

[表1]海賊発生件数推移
表1海賊発生件数推移

[表2]世界各地域の海賊発生件数の比較
表2世界各地域毎の海賊発生件数の比較

[表3] 乗組員・乗客の被害状況(過去3年比較)
乗組員・乗客の被害状況

被害状況2010

被害状況2011
被害状況2012

 

[表4]主要発生海域
[表4]主要発生海域

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