JSA 社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Home海賊問題 海賊インフォメーション >2014年の海賊事件発生状況

海賊問題

海賊発生件数は最低記録を更新
—2014年の海賊事件発生状況—
 国際商工会議所(ICC)の下部組織である国際海事局(IMB)は、2014年に世界で発生した海賊等事案について報告書を発行しました。これらの概要は以下のとおりです。
 なお、政府等関係機関に対して防止対策の強化を要請する上で、海賊事件の実態把握が重要となります。関係各社におかれましては、海賊事件に巻き込まれた際には、関係先への通報を徹底いただきますよう、よろしくお願いいたします。

2014年IMB海賊レポート概要
 2014年に報告のあった海賊事件は、245件と前年より僅かに減少(前年比約7.2%減)し、2008年以降では最低となった。(表1参照)
 ソマリア海賊による事件が2012年以降から激減していることにより、全体的な発生件数も減少傾向にある。アフリカ海域における海賊事件発生件数は2013年に79件報告されていたが、2014年は55件(前年比約30.4%)と、前年同様に減少が続いた。IMBでは、海賊発生件数の減少は、海陸における連合軍の活動や民間武装ガードの起用などの、有効な防衛手段による効果の表れとしている。
 一方で、海賊発生件数は減少しているものの、不審船情報が報告されていることなどから、IMBでは、引き続き適切な海賊対策と、襲撃への警戒を実施する必要がある、と強調している。
 また、東南アジアにおいては、前年に引き続き増加傾向にあり、前年比約10%増の141件となった。(表2参照)

 世界全体で、海賊事件発生件数が減少していること反し、被害に遭った乗組員・乗客の数は大きく増加し、2014年は479名(前年比約28%増)、人質に関しては442名(前年比約45%増)となった。特に東南アジアで277人(昨年比183%増)と増加したのが顕著であった。(表3参照)

 発生海域別にみると、全体では1位インドネシア 100件、2位マレーシア 24件、3位バングラディシュ21件とアジア地域での事件が顕著であった。(表4参照)

 海賊事件発生件数では、東南アジアでの事件が、昨年に続き増加傾向にある。

<アフリカ地域>
 紅海を含むソマリア周辺海域における海賊事件は、11件と前年同様に低いレベルであったことに加え、武装ガード乗船による対応等の適切な対処により、深刻な事態となる事件発生は防がれた。ギニア湾沿岸諸国全体の発生件数は、ナイジェリアが18件(前年比42%減)と減少したことにより、全体でも前年に比べ41件(前年比20%減)と減少した。
 ソマリア海賊による事件発生件数は、各国政府による海賊対処活動やBMPの徹底、民間武装ガードの採用等による各商船の海賊対策強化が継続されていることで、低いレベルにあるが、脅威は依然として大きく、海軍や各商船による警戒は不可欠である。

<東南アジア地域>
 東南アジアにおける海賊事件は2010年以降増加傾向にある。シンガポール海峡では、8件と昨年に比べ大きな増減はないが、マレーシアが24件(前年比167%増)と大きく増加した。全体としては前年の128件から141件に増え、前年比10%増となった。特にインドネシアでは2009年以降、海賊事件が増加を続け、本年も、前年と略同数の、100件の事件が発生した。

<その他の地域>
 2013年に比べ、南米でも減少傾向となった。またバングラディシュにおいては、同国沿岸警備隊による警備強化により、ここ数年大幅に減していたが、本年は前年より9件増加し、2010年以来の20件越えとなった。特にチッタゴン周辺での停泊時には注意が求められている。

[主な事件の概要]
(1) 2014年4月14日12:30 UTC頃、アデン湾(12-25N, 043-43 E)で、7人の海賊がRPGを装備し、白い船体のスキフで、航行中の本船へ接近してきた。船長はアラームと汽笛を吹鳴し、放水を行い、加えて2発のパラシュートロケットを発射した。乗船していた武装ガードが、乗り込み用梯子が、スキフに積み込まれていることを視認したため、武器携帯を海賊に示したところ、海賊は襲撃を断念し、立ち去った。

(2) 2014年2月13日14:30 UTC頃、ソマリア ブラバ沖 (01-07N,044-07E)で、AK47ライフルで武装した5人の海賊が、白い船体のスキフで本船へ発砲しながら接近してきた。スキフが約500mのところまで接近してきたため、本船の民間武装ガードが警告射撃を数発行ったが、海賊は応戦しながら、追跡を続けた。最終的に、海賊は本船の襲撃を諦め、陸側へ引き返していった。甲板上にあるコンテナに弾痕のダメージが認められた。

(3) 2014年12月30日13:00 UTC頃、Zubair Island Group西方(15-06N,42-00E)で、 海賊9人が、2隻のスキフに分乗し(3人と6人)、航行中の本船を、追跡してきた。本船では、警報が発せられ、乗組員をシタデルへ避難させた。本船の武装警備員が警告として、発炎筒を発射した。スキフは本船への接近を続け、至近へ接近した際、武器と梯子が積見込まれていることが確認された。その後、本船の武装警備員が警告射撃を行ったが、海賊は追跡を続け、本船へ接近してきたため、再度警告射撃を行ったところ、スキフは追跡を諦めた。本船は航行を継続し、乗組員は全員無事。

[表1]海賊発生件数推移
表1海賊発生件数推移

[表2]世界各地域の海賊発生件数の比較
表2世界各地域毎の海賊発生件数の比較

[表3] 乗組員・乗客の被害状況(過去3年比較)
乗組員・乗客の被害状況

被害状況2012

被害状況2013
被害状況2014

 

[表4]主要発生海域
[表4]主要発生海域

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保