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2005年8月

「ROBUST SHIP」

日本船主協会 副会長
新日本石油タンカー株式会社 代表取締役社長
神田 康孝

タンカーの相次いだ重大事故の対応策として、第3階層を含めた油濁補償体制の見直しが活発に討議されている一方で、これまで船体の検査基準の強化、シングルハルタンカーの前倒しフェーズアウトや固定点検設備(PMA)の設置など、関連業界に多大な影響を及ぼすルール改正が矢継ぎ早に行われてきた。
 現在、さらにIMOの場において、より安全性を高める船のあり方、GOAL BASED STANDARD (GBS)についての審議が進行中である。その前段階として国際船級協会連合ではROBUST SHIP(頑丈な船)を目指す共通構造規則(COMMON STRUCTURAL RULES ; CSR)が採択に向けた最終段階に入りつつある。
 GBS/CSRの目的は船の安全性の向上、環境保全や構造規則の統一を目指すものであり、その趣旨は大いに賛同できる。
 しかしながら、GBSに先行し議論されてきたこれまでのCSRの検討の経緯を振り返ると、当初案では、現行のダブルハルVLCCと比較して約8%、3,000トンにも及ぶ鋼材重量増になるといったような試算が示され、その信頼性に疑いを持った関係者も多かったのではなかろうか。
 それが今では、主に日韓を中心とする業界の意見が取り入れられ、4%程度の増加に縮小していると聞いている。船の安全性は頑丈な船であることも重要な要素の一つではあるが、長期間に亘る船の生涯を構造面だけでカバーするのは困難かつ資源の無駄使いである。
 船体構造のみならずメンテナンス、乗組員・陸上社員教育を含めた総合的な船舶管理体制も同様にROBUSTであることが、CSR確立の基盤をなすものではなかろうか。
 CSRのもう一方の根幹をなすタンカーとバルカーの構造規則の統一化についてはこれまで、それぞれの開発を担当しているグループ間の設計思想がかみ合わず、両構造規則を整合しないまま早期採択をしようとする動きがあった。
 これも当協会、日本造船工業会等の業界の度重なる申入れによって、ようやく統一化に向けた話し合いが始まった。今後、タンカーやバルカーのみならず、他の船種にもCSRの適用を拡大してROBUST SHIPを目指して行くには避けて通れない問題である。
 重大事故直後には、船舶需給のバランス感覚を度外視したシングルハルタンカーのフェーズアウトや、メンテナンスの視点を欠いた過剰なPMAの例のように、性急かつ極端な対応策が提案されがちであるが、当協会としては、冷静に、合理的なルール作りが出来るよう、引き続き世界に向けて意見を発信していきたいものである。

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