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オピニオン

2005年11月

海の安全

日本船主協会 常任理事
三光汽船株式会社 代表取締役社長
松井 毅

ロイズ保険組合は、本年6月、新たに他の水域と共にマラッカ海峡及び隣接諸港についても船舶戦争保険除外水域に指定し、日本の主要損害保険各社は、本年9月1日より同水域に割増保険料率を適用するようになった。日本の原油輸入量の8割超が通過するだけにこの決定には大きな影響が生じるとして反響を呼んだ。ロイズ保険組合が戦争・テロ危険の専門コンサルタントにより示された、同水域での海賊行為が、自動兵器など高度の武器を使用するようになってきたこと、組織的なグループとして行動していること、また身代金目的に誘拐を行うケースが増加していること、そして海賊がテロリストと殆ど区別がつかなくなっているというアドバイスを受けてのことである。
 国際商業会議所(ICC)・国際海事局(IMB)のレポートによれば、世界の船舶襲撃事件は2004年に全世界で325件発生しており、全世界的には減少する傾向にあるがマラッカ・シンガポール海峡においては30件と増加傾向にある。1日あたり200隻を越える大型船舶が通過していると見なされているこの海峡での事件数が意味するものは、地政学的な位置の重要性からは決して小さいものでなく、二次災害の脅威から環境に対する影響も強く懸念されている。
 国際航行に使用されているこの海峡の安全・治安は領海を接する各国の海上警備機関に委ねられているが、その連携体制の充実が一層求められている状況にあって、船社も最終的には自衛責任があるだけに手を拱いているわけにはいかない。当社管理船でも不審船の接近を受けたり、追跡を受けたことが何度かある。幸い、警戒態勢をとっているため早期発見ができ、いずれも難を免れている。多くの船社同様、当社管理船舶に1,000メートル先の地点で活字を拾えるという投光器をブリッジに設置し、ドリルの充実と見張りを強化するなど船舶保安体制の強化に努めている。
 おりしも、10月8日war poolを形成する日本の損害保険会社はマラッカ海峡が戦争保険の除外水域に変わりないことを承知したうえで、インドネシア側寄港地を除いて割増料率を零とした。IMOによる各種勧告、わが国当局による旗国にとらわれない自主警備対策の環境整備にむけての取り組みと地域間協定策定の推進、そして船社等の自助努力等が評価されたものと思うが、これらの努力が実り、同水域の安全が確保され、除外水域から除かれるよう望んでやまない。

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