JSA 社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Homeオピニオン > 2006年2月

オピニオン

2006年2月

少子高齢化問題と国際化

日本船主協会 常任理事
飯野海運株式会社 代表取締役社長
杉本 勝之

明治維新後諸外国との貿易が始まると、海運、商社、銀行等から多くの諸先輩が渡航して海外で仕事をし、国際人として帰国して活躍した。その後もこの構図に変わりはなく、戦後も高度成長を果たし貿易摩擦が激しくなり円が強くなるまで、海外との関りが深かったのは第三次産業の貿易に携わる人達であった。
 円が強くなったとき、海運業ではコスト競争力を維持するために、逸早く外航船に外国人船員を活用し血の出るような努力を重ねてきた。仕組船に外国人船員を乗せて動かし始めてすでに30年になる。この間にいろいろな問題が起こったが、何とか国際競争を維持しこれまでやってきた。現在それがノウハウとなって蓄積されている。
 昔から分かっていたことであるが、最近になって少子高齢化対策が声高に問われている。団塊の世代が定年を迎え、出生率が下がり年々若い労働力が減っていく。それをどう解決するのか。ひとつの手段として海外との関係をもう一度見直し、外国人を有効に活用しようという議論が盛んである。
 外国人を外航船員として有効に活用するという点で我々海運界は一歩先んじている。少子高齢化対策で外国人を船員として起用してきたわけではないが、結果として対応を先取りしたことになる。少子高齢化により明日すぐに問題が起こることもない。今いる人を上手く使っていけば当面何とか対応できる。その間に「若い人」にノウハウを継承して行けば良い。
 しかし、問題は、今あるノウハウを伝承して外国人船員を管理する有能な「若い人」を今後どのように確保していくかという点である。現在どんなにノウハウを蓄積していてもそれを継承する人がいなくては、全てが雲散霧消してしまう。船員問題を例に挙げたが、問題は、陸員と陸上で働く海技者である。陸ではライナーを除き現地に根をはやす国際化を行ってきていないので問題は深刻だ。海運業全体を魅力のあるものにするためにも、有能な「若い人」を今からもっと外に出していかないと日本の海運業は10年後、20年後に立ち往生してしまう。

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保