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2007年3月

海運業界の今

日本船主協会 常任理事
第一中央汽船株式会社 代表取締役社長
野村 親信

我が国経済は1965年11月から57ヶ月間に亘り戦後最長の景気拡大を続け“いざなぎ景気”と呼ばれたが、昨年11月には期間において遂にそれを超え、成長率は当時に比較してかなり低いものの未だその成長を維持している。
 景気の拡大を輸出に大きく依存している日本の景気がこのように持続的成長を遂げているのも、輸出の相手国である米国や欧州の経済が好調であることが主な要因であることは言うまでも無い。加えて、これだけ我が国も含めた世界経済全体の好調が続いているのは、ここ数年の中国・インドを中心とした新興経済圏の飛躍的な経済成長に負うところが大きいのも異論の無いところであろう。
 このような世界経済の急成長が世界的荷動き量の増大をもたらし、2003年の秋口から急騰し始めた不定期船市況は4年目に入った現在も高レベルを維持している。もともと海運というビジネスは世界単一市場の中で激しい国際競争に晒されており、特に我が国の海運界は1970年代以降円高と言う固有の命題を抱え苦難の連続であったと言える。その後邦船各社は為替対策の一環として便宜置籍船や外国船員配乗への切り替えを一層進めたり、その他様々な合理化を実行することにより冬の時代を乗り越えたからこそ、現在の好市況を享受し好業績を上げることができているのである。
 四方を海に囲まれ資源に乏しい我が国は、自国では生産できない資源・エネルギー、食料などを大量に輸入し、付加価値を付けて輸出することで経済の基盤を築いてきた。
 こう言った国際間の物流に従事してきた海運は、これまで我が国経済の発展に重要な役割を果たしてきたし、これからも益々重要度を増して行くことは疑いの無いところであるが、残念ながら今までの社会の海運に対する認知度は余り高くなかったと言わざるを得ない。
 しかしながらここにきて「トン数標準税制」の要望を行うなどの当協会を中心にした地道な活動を続けてきた結果、海運業界に対する政治の反応などは予想外に大きくその重要度の認識が相当高まってきている。海運業界が見直され、その重要性が認知されることは大変喜ばしいことであるが、同時に社会的責任も益々増大してきていることを我々は肝に銘じておかなければならない。
 今まさに「日本にとっての海運」を国土交通省交通政策審議会の海事分科会にて6月の取り纏めを目指して議論していただいている。委員の皆様には将来を見据えて我が国の海運業界を伸ばすことこそ国益に繋がってゆくことを再認識いただいた上で議論を尽くしていただければ幸いである。またその議論の結果が我々海運業界の経営の進むべき方向性と一致し日本の海運の明るい未来像を示すものであることを期待したい。

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