JSA 社団法人日本船主協会
文字サイズを変更する
小
中
大

Homeオピニオン > 2008年9月

オピニオン

2008年9月

「海フェスタ」

日本船主協会 副会長
上野トランステック株式会社 代表取締役会長兼CEO
(日本内航海運組合総連合会会長)
上野 孝

 2009年の「海フェスタ」は、開港150周年に合わせ横浜で開催される。日本内航海運組合総連合会会長として、中田横浜市長よりその実行委員を仰せつかった。会場は横浜港周辺、7月20日(海の日)を中心に開催される一大イベントである。一般的に知られていない内航海運をPRできる絶好の機会であり、内航海運が広く国民に理解されるよう業界挙げて取り組んで行きたいと思っている。
 内航海運は産業の大動脈として、外航海運、国内陸運と共に、国民生活に不可欠な輸送手段である。内航海運による国内貨物輸送量は全体の約4割を担い、素材産業関連の貨物(石油、鉄鋼、セメント等)では、トンキロベースで約8割を担っている。CO2排出量は運輸部門の約5%、二酸化炭素排出量はトラックに比べ約4分の1、省エネ基準(1トンの貨物を1km運ぶエネルギー)でも約4分の1と環境保護の面でも優れた輸送機関である。四面を海に囲まれたわが国ほど、内航海運が果たす役割が大きな国はない。
 しかし、その実情は、長い間にわたる運賃・用船料の下落により、事業者数はこの10年間で3分の2まで減少し、船員数も30年前の約7万人から現在は2万人を割り、その約40%が55才以上と高齢化も進んでいる。団塊世代の大量退職時代を迎え、確実に船員不足となることが予想される。一方、内航船の約6割が耐用年数を超えた船令14年以上の老朽船である。合理化ももはや限界に来ており、進行する船員の高齢化と船舶の老朽化は、安全・安定輸送にとって最大の不安要因となっている。これに船舶燃料油の高騰が加わってさらに経営を圧迫しており、このままだと最悪、輸送に支障を来たす事態も想定される。
 前門の虎、後門の狼という言葉があるが、現在、我々業界は前面には、荷主から低運賃を要求され、後方では造船所から高船価を迫られ、さらに高騰する燃料費負担が押し寄せている。また、門の中には、船員の高齢化と船舶の老朽化という課題を抱え、まさに危機的状況にある。今こそ、抜本的な対策を荷主、国交省、業界が歩調を合わせ協働して検討していかなければならない。このためにも、内航海運が日本の産業や国民生活に果たしている役割や地球環境問題に貢献しうる輸送モードであることなど、一般社会、経済界にしっかりと伝えていくことが必要である。「海フェスタ」を業界の百年の大計を産み出すための第一歩とする、またとないイベントとなるよう力を注いでいきたい。

  • オピニオン
  • 海運政策・税制
  • 海賊問題
  • 環境問題
  • 各種レポート
  • IMO情報
  • ASF情報
  • 海事人材の確保