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オピニオン

2008年11月

随想「安全・安心」

日本船主協会 常任理事
三光汽船株式会社 代表取締役社長
松井 毅

 このところ「安全」と言う言葉の響きが一段と大きくなり、この二文字がマスコミに登場しない日はないのではないか。
 特に食品偽装が後を絶たず、暮らしの安全・安心が置き去りにされ、食への不安の声が日増しに高まっているご時世である。
 かつての日本は、安全と治安の良さが世界で最も優れていると称賛されたのに、今やそれも神話的となり、瓦解し始めている。
 目に見えない何かが、日本人の心の中にあった貴重な何かが忘れ去られ、崩れようとしているのではないだろうか。
 また、食に関することだけではなく、作業現場における安全も然りである。
 安全と健康は、人間古来よりの願いであるが、多くの作業現場で数多く事故が起きており、安全確保のために懸命な努力を積み重ねても、不幸は後を絶たないでいる。
 人間は安全を実現し確保するために、数多くのノウハウを蓄積しそれを理論化して、技術を創り出し実行してきたが、未だに事故撲滅に至っていない。また、事故の原因の多くが、ヒューマンエラーであると言うのも、誠もって悲しい事態である。
 事故撲滅の理想は、機械を誤りなく、故障しないように設計・製造し、それを使う人間は教育・訓練で間違いない操作を身に付ければ良いと言うことになるが、言うは易し行うは難しである。人間が造った機械は絶対壊れることはなく、それを操作する人間が絶対にミスをしないようにすると言うのは、現実には極めて困難なことでしょう。
 「機械は故障し、人間は間違いを犯すものである」と言う大前提に立って安全を確保する必要がある。ならばフェイルセーフ設計とかフールプルーフというフィードフォワードの対処方法を費用と効果を考えながら積極的に対応し、事故災害ゼロに向かって、ひたすら懸命な努力と精進を継続する。これ以外に道はないように思う。日頃から機械の安全確保と機能の熟知修練が、一段と必要とされるのではないだろうか。

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